第十九章 霊媒師 入籍

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私が笑うと社長も笑った。 だけどそのあとグイッと眉を吊り上げて、 「ジジィもエイミーも余計なコト言いやがって。ユリが無駄に心配すんじゃねぇか。こりゃシメとかないとだな」 と指をポキポキと鳴らす。 あ……ち、違うんです、先代も岡村さんも何も言ってません、無実です。 ど、どうしよう。 「あ、あの、違います。お二人は何も言ってません。私が勝手にそう思っただけです。お、女の子なら、大体そういうコト考えるんです、本当です。だから先代にも岡村さんにも、何も言わなくて大丈夫です」 「そうなのか? まぁ、確かに女ってのは野郎よりも複雑なコト考える生き物だからな」 「そ、そうですよ! そんなコトより社長の趣味ってなんですか? さっき紹介された方とは趣味が合わなかったって、」 「趣味? 趣味なら色々あるぞ。今、一番楽しいのは車だな。運転するのもいじるのも好きでよ」 「車が好きなのか……ふはは、社長の好きなコト一つわかった、……あ、いや、なんでもないです。そうだ! 言おうと思ってたんだ! 社長、私に嘘つきましたね? アパートから社長のオウチまで全然近くないじゃないですか! 私、地図見ちゃったんですからね」 「あぁ? そうかぁ? (ちけ)えだろ。車好きはアレくらいの距離で遠いなんて思わねぇ。東京から静岡こえたあたりから、やっと遠いって言うんだよ」 「え……そういうモノなんですか?」 「そうだ。だから気にすんな。そういやユリは免許持ってるのか?」 「えっと、持ってます。私、誕生日が10月だから、18になってすぐの高校生の頃に取っちゃいました。田舎では運転もしてたんですよ。その頃はもう爺ちゃんの体調が良くなかったから、私が病院の送り迎えをしてたんです」 「へぇ! スゲェじゃねぇか! 今度会社の車運転してみるか! 会社のならオートマだぞ?」 「オートマか……そっちでも大丈夫だと思うけど、爺ちゃんの車がマニュアルだったから、田舎ではずっとギア車を乗ってたんです。オートマは乗った事がないから、少しならさないと」 「マジか! おまえマニュアル乗りかよ! 今の世代はわざわざギア車なんて選ばないだろ? なんだってソッチで取ったんだ?」 「ん、確かに少なかったかも。でも、ウチは普段家族で乗る車も、爺ちゃんの軽トラもギアだから、乗るならマニュアルで取らないとダメだったんです」 「そうか、それでか。でもよ、運転するなら絶対(ぜってぇ)マニュアルの方が面白れぇ! 乗れるならちょうどいい。今度俺の車運転してみるか?」 「えぇ!? この車を!? そ、それはコワイです! もしぶつけちゃったら大変だもの!」 「大丈夫だよ、俺が助手席に乗ってあーだこーだ言うから。ぶつけないようにしてやる」 「で、でも! 社長はこの車大事にしてますよね? 私なんかに運転させたらキケンです。……で、でも、私の運転で社長が助手席……それもまたいいなぁ……あ、いや、なんでもないです、独り言です」 「ユリは心配性だな。大丈夫だっての。ま、運転したくなったら言ってくれ。そん時はさせてやる。それまでは俺が運転するからよ」 「……はい!」 うわぁ……! うわぁ……!  お話出来てる……! 何を話したらいいか分からないって思ってたのに、今、いっぱいお話してる! 社長、すごく笑ってる! 嬉しいな、それにすごく楽しい……!
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