第十九章 霊媒師 入籍

24/102
前へ
/2550ページ
次へ
ふははははは、 思い出すと笑ってしまう。 あんな答えじゃ、ちっとも参考にならない。 本当なら好きなタイプを聞き出して、それに近づこうと思ってた。 だけど無理だぁ。 本当にこだわりがないんだもん。 ううん、違うか。 もしかしたら、ものすごくこだわりがあるのかもしれないな。 「だからよ、人を好きになるってのはそうじゃねぇだろ。髪が長いから、メシがうまいから、見てくれがいいから、そんな理由で好きになるんじゃねぇんだ。突然だよ、全然意識もしてなかったのに、ある日突然ストンと落ちるように好きになるんだ。そうなったら最後、とことん好きになる。そういう女に出逢えたら、俺の命をくれたってかまわねぇさ」 言った後、顔を真っ赤にして「なんてなっ!」って照れていた。 あんなに大きな身体で、モジモジして頭を掻いて……私は我慢できずに笑っちゃったんだ。 そしたら社長も一緒になって笑ってくれて、同じコトで笑い合えたのが楽しくて幸せでたまらなかった。 ねぇ、社長。 私が先ですね。 私が先にストンと落ちたんです。 ある日突然、出逢ったばかりなのに、そんなの関係なしに。 そうなったら最後、とことん好きになっちゃいました。 私の命も社長にあげたってかまわない。 大好きです。 「ふはは……なんで涙が出るんだろ……? へんなの。……社長、明日も一緒に帰るって言ってたなぁ。嬉しいけど帰り道が心配だよ。……あ、そうだ、」 買い物袋の中身はぜんぶ片付いた。 今日の研修の復習をする前に、押し入れから裁縫道具を取り出した。 婆ちゃんの形見のだから、道具も布の端切れもたくさん入っている。 私はその端切れの中から、キレイなピンク色の布を手に取った。 「毎日無事にオウチに帰れますように」 昔、爺ちゃんにも作ったコトがあるんだ。 “無事にカエル” の、お守り。 社長の為にカエルのマスコットを作ろう。 ピンクで頭にはお花の飾りをつけて。 ふははは、ピンクのカエルちゃんじゃあ、社長には可愛いすぎるかな? だけどいいの、作っちゃう。 これを明日渡したら、どんな顔をするかな。 笑ってくれるかな? 可愛いすぎで困らせちゃうかな? でもきっと、社長は車につけてくれるんだろうな。 だって優しい人だから。
/2550ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2372人が本棚に入れています
本棚に追加