第十九章 霊媒師 入籍

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「…………ありがとうございます。心配かけてごめんなさい」 「心配もするわ。さっきのユリ、目ぇ真っ赤にして、鼻水ズルズルさせて、挙句、ティッシュと俺の手ぇ間違えたもんなぁ」 ん……? ……は、はい? ティッシュと間違えた……? 「えっと……どういう意味ですか……?」 「だからよ、さっき俺の手ごと掴んだだろ。ああ、別に良いんだけどな。俺の手で鼻かむくれぇ。けど、それで確信した。こりゃあ、風邪ひいて熱もあるってな。だから一旦車停めて様子を聞こうと思ったんだ。場合によっちゃあ、この道の裏は小せえけど病院がある。でもまぁ良かったよ、風邪じゃなくて。たぶん疲れが溜まったんだろ」 ………………こ、これ、ワザとかな? ティッシュと手は間違えないと思うけど、ワザと気が付いてない振りしてるのかな? で、でも…… 「俺もどうしてもな時は、手鼻するしよ」 と、衝撃発言してるし……という事は……やっぱり本気で言ってる……? えぇ……待ってぇ……いくらなんでも社長の手で鼻をかもうなんて、熱があっても疲れてても思わないよぉ。 それとも、それくらいのコトしちゃいそうな子だと思われてたら……そっちの方がイヤだぁ。 はぁ……これが良かったのか悪かったのか。 悲しいけど、社長が私を恋愛対象じゃなく、保護対象として見てるから、こういう発想になっちゃうんだろうなぁ……はぁぁ。 絶対気付かれたと思ったのに……だけど…… とりあえずは気まずくならずに済んだみたい。 ホッとした半面、これは大変だなぁって思ったの。 もし……この先、社長に想いを伝えようと思っても、この調子じゃあ、普通に言っても伝わらない。 ヘンなふうに解釈されて、ぜんぜん違う心配をかけてしまう。 本当にくるかはわからないけど、そんな日がやってきたら、もっとストレートに、わかりやすく、余計なコトは言わないで……そう、私と結婚してください! くらい言わないとダメだ。 「…………ふは、ふはは……ぶにゃはははは……」 はぁぁ……無理だぁ。 そんなコト言えるはずがないよぉ。 結婚なんて、”好きです”の二歩も三歩も先の話だもん。 「なんだよ気持ち悪い笑い方すんなよ……ユリらしくねぇな。やっぱり調子が悪いんじゃねぇのか?」 眉間にシワを寄せた社長は「本当のコトを言え!」と私を脅す。 ふははは、そんな顔もカッコイイなぁと思っちゃう私は、社長風邪にかかってるんだ。
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