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「…………ありがとうございます。心配かけてごめんなさい」
「心配もするわ。さっきのユリ、目ぇ真っ赤にして、鼻水ズルズルさせて、挙句、ティッシュと俺の手ぇ間違えたもんなぁ」
ん……? ……は、はい?
ティッシュと間違えた……?
「えっと……どういう意味ですか……?」
「だからよ、さっき俺の手ごと掴んだだろ。ああ、別に良いんだけどな。俺の手で鼻かむくれぇ。けど、それで確信した。こりゃあ、風邪ひいて熱もあるってな。だから一旦車停めて様子を聞こうと思ったんだ。場合によっちゃあ、この道の裏は小せえけど病院がある。でもまぁ良かったよ、風邪じゃなくて。たぶん疲れが溜まったんだろ」
………………こ、これ、ワザとかな?
ティッシュと手は間違えないと思うけど、ワザと気が付いてない振りしてるのかな?
で、でも……
「俺もどうしてもな時は、手鼻するしよ」
と、衝撃発言してるし……という事は……やっぱり本気で言ってる……?
えぇ……待ってぇ……いくらなんでも社長の手で鼻をかもうなんて、熱があっても疲れてても思わないよぉ。
それとも、それくらいのコトしちゃいそうな子だと思われてたら……そっちの方がイヤだぁ。
はぁ……これが良かったのか悪かったのか。
悲しいけど、社長が私を恋愛対象じゃなく、保護対象として見てるから、こういう発想になっちゃうんだろうなぁ……はぁぁ。
絶対気付かれたと思ったのに……だけど……
とりあえずは気まずくならずに済んだみたい。
ホッとした半面、これは大変だなぁって思ったの。
もし……この先、社長に想いを伝えようと思っても、この調子じゃあ、普通に言っても伝わらない。
ヘンなふうに解釈されて、ぜんぜん違う心配をかけてしまう。
本当にくるかはわからないけど、そんな日がやってきたら、もっとストレートに、わかりやすく、余計なコトは言わないで……そう、私と結婚してください! くらい言わないとダメだ。
「…………ふは、ふはは……ぶにゃはははは……」
はぁぁ……無理だぁ。
そんなコト言えるはずがないよぉ。
結婚なんて、”好きです”の二歩も三歩も先の話だもん。
「なんだよ気持ち悪い笑い方すんなよ……ユリらしくねぇな。やっぱり調子が悪いんじゃねぇのか?」
眉間にシワを寄せた社長は「本当のコトを言え!」と私を脅す。
ふははは、そんな顔もカッコイイなぁと思っちゃう私は、社長風邪にかかってるんだ。
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