第十九章 霊媒師 入籍

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「風邪じゃないし疲れてもいません。すごく元気だから、明日も早起きして会社で勉強するつもりです。朝の方が頭に入るんですよね」 爺ちゃんと婆ちゃんの影響で、私は低血圧のクセに朝方人間だもの。 勉強でもなんでも朝の方が集中出来る。 「あぁ、そのコトなんだけどよ。明日は普通に出社しろ。早くに来ねぇで、8時半ギリギリに来い」 「え、どうしてですか?」 早起きしてアパートで勉強してから出社してもいいのだけど、一つのコトに集中すると他が見えなくなる私は、下手をすれば時間を見るのを忘れてしまう。 事務の勉強に夢中になって遅刻しました、では本末転倒だもん。 だから最初に出勤しておけば安心なんだけど…… 「明日はな、また別の霊媒師が出社予定なんだ。前に話しただろ? ウチの会社にはあと二人、女の社員がいるって。明日はそのうちの一人、小野坂って女が出社する。現場を終えた後の出勤だから昼までに来りゃあいいんだけどよ、アイツの性格上、少なくとも定時、早ければユリと同じくらいには出勤してくる」 「わぁ、じゃあ、また別の先輩とお会い出来るんですね」 緊張しそうだけど嬉しい。 小野坂……さん、キーマンさんみたいに優しい方だといいな。 この会社で長く勤めたい、だから社員の方とは早く顔合わせをして、仲良くなりたいと思ってる。 「ああ、まぁそうだ。けどな、アイツはちょっと難しいところがあるんだ。ちゃんと紹介するし、交通費の精算もユリにやってもらうが、そん時は俺かジジィが同席するつもりだ。キーマンとはちょっと違うタイプだと思ってくれてりゃあいい。それと……こんな事を言っておいてなんだが誤解はしねぇでくれ。難しい女だが、根っからの悪人じゃねぇ。ただちょっとモノの言い方がキツイ」 キツイ……んだ。 あ……もしかして、研修の時にいきなり社長を霊矢で撃ってきた方かな。 少し怖いな、キーマンさんや岡村さんとはぜんぜん違うっぽい。 ちゃんとお話しできるかな。 社長がこんな風に言うなんてよほどだろう……うん。 「わかりました。明日は8時半に出社します」 「うん、頼むわ。ま、そうと決まった所で(けえ)るか。風邪じゃないにしても、今日は大変だったろ? 早く寝た方がいい」 社長はそう言うとエンジンをかけUターンをした。 明日はお会いする小野坂先輩は、一体どんな方なんだろう。
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