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寄ろうと思ったコンビニの前。
最初からそこにいたんじゃない。
駅から歩いて来た時、目線の先にあのヒトはいなかった。
ジワジワと……そう、地面から、泡が沸き立つように、少しずつ姿を現した。
あれ、なにかあるなとは思ったけど、カラダの一部しか視えなかったし、声も出していなかったから、それが何か分からなくて気にもとめなかった。
だけど今、そこには男のヒトが倒れもがき苦しんでいるのがハッキリ分かる。
50代くらいの方かな……?
すごく顔色が悪くて、すごく痩せている。
上着は青っぽいシャツで……どこかで見たようなと思ったらコンビニの制服によく似ていた。
胸に大きな穴が開き、骨ばった両手で押さえながら、……ああ、酷い……その手にも穴がたくさん開いてるよ。
無数の傷口は、なんでか分からないけど蒼くバチバチと光っていた。
薄い髪はまばらに乱れて、転がるたびに顔や首に張り付くの。
苦しそうで見てられない。
救急車、と、一瞬考え、カバンのスマホを取り出そうと思ってやめた。
呼んでも意味がないから。
左胸に開く大きな穴は人の拳くらいで、どうしてこんな事になったのか予想がつかない。
けど、あんな穴が開いていたら生きていられる訳がない。
なのに……あのヒトは叫びながら動いている。
____苦しい……! 痛い……!
____誰か助けてくれ……!
____ナオキ助けてくれ……!
____お父さんを助けて……!
コンビニの前でそのヒトは、そう繰り返し叫んでいるの。
生きていられるはずがないのに。
そう……あのヒトの身体には陽炎のような揺らめきが視える。
死んだママにも、爺ちゃんにも、婆ちゃんにもあった、あの揺らめきが。
ああ……どうしたらいいんだろう?
私に何が出来るだろう?
わからない……でもね、視てしまったのだもの。
このヒトは、もう亡くなっているけど。
こんなに苦しんでいる人を放っておく事は出来ない。
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