第十九章 霊媒師 入籍

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なんで……光ってるの……? 急にペンダントが熱くなって……言霊、唱えてないのにって……不思議に思って……それで……それで……手を広げたら……赤く光っていた。 訳がわからなくて、だけど綺麗だなぁって眺めていたら、一緒に視ていた菅野さんも目を丸くして覗き込んできたの。 『……”株式会社おくりび” 、思い出したよ。おたくの社長さん、よくうちのコンビニを利用してくれるんだ。こう髪を剃り上げた身体の大きな方だよね。うんと前にチラっと聞いたコトがある、おくりびさんは普通の会社じゃない、祓い屋さんなんだろう?』 目を細める菅野さんと近い距離で目が合って、光に照らされた顔は赤みが差し、一瞬、生きている人に視えた。 『だから私の姿が視えるのか……だからこんな事が出来るのか……すごいなぁ……私、こんなの視るのは初めてだよ。ああ……キレイだなぁ……それにとっても温かくて気持ちが良い……胸の痛みが……和らぐいでくる……ふぅぅ、』 菅野さんはとうとう目を閉じ、眉間のシワから力を抜いた。 赤い光が温かくて、焚き火みたいだねと両手をかざし炙っている。 へ、へんなの。 光は確かに温かいけど、菅野さんがあたっているのは焚き火じゃない、私なんだもの(・・・・・・)。 『あぁぁ、本当に楽になる。藤田さん、しばらくこうしててもいいかい?』 私で手をあぶり続ける菅野さんに「は、はい」しか言えない。 なんかちょっと恥ずかしい……でも、これで痛みが和らぐのなら、どうぞあたっていてくださ、…………ん? 痛みが和らぐ……? 本当に……? …… ………… ……………… あったかいから、そんな気がする、 そういうのとは違いそうなくらい、菅野さんは熱心にあたっている。 本当に、傷の痛みが和らいでいるのかもしれない。 そんな事……本当に……ううん、そうだ。 社長が、霊力(ちから)を貸してくれたんだ。 きっとそう、だってこのペンダントには社長の霊力(ちから)が込められているんだもの。 これを胸の傷に直接押し当てたら、もしかして治してあげられるんじゃないかな…… 「……あの、菅野さん。ちょっと試してみたい事があるんです。もしかしたら傷を治してあげられるかもしれません。……どうかうまくいきますように。 ごめんなさい、ちょっと胸元失礼しますね、」 菅野さんはポカンとしながら私を視ていた。 何をするのかわからないと言った顔で、詳しく説明しようと思ったけど、もし、グズグズしてるうちに、社長の霊力(ちから)が消えてしまったら……そう考えて、説明は省略させてもらう事にしたの。
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