第十九章 霊媒師 入籍

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お尻をついて座る菅野さんの左胸。 焚火のようにあたるだけでも痛みが和らぐというんだもの、これを直接押し付けたら、少なくとも今よりは良くなるはず、……そうであってほしいと強く願いながら赤く光る手をあてがった。 緊張する……だけど試してみたい。 うまくいけば菅野さんは痛い思いをしなくて済むの。 「社長お願い、菅野さんを助けてあげてください……!」 ピギイィッ! 触れた瞬間、弾けるような音と強い衝撃がして、しゃがむ私は後ろに尻もちをついた。 手が少し離れてしまって、慌てて起きて近づける。 菅野さんの胸に当てた手の下では、傷に絡む蒼い電気と、社長の赤い電気、二色の光が激しくぶつかり合って、喧嘩をするように稲妻を走らせていた。 蒼い電気は冷たくて霊力(ちから)が強くて、私の手は押し返されてしまいそう。 しゃがんだ体勢ではダメだ。 蒼い霊力(ちから)に負けないように、私は地に膝をついて踏ん張った。 小さな小石が肌に食い込むけど気にしてなどいられない。 踏ん張ったおかげで、なんとか押し返されずにすんでるけども、今度は蒼い電気が鋭角に変化して無数の針となった。 その先端が私の手のひらにいくつも刺さり、途端、鳥肌の立つ痛みに襲われた。 『藤田さん、手を離しなさい!』 菅野さんは言ったけど、私は首を振って拒否をした。 大丈夫、まだ大丈夫。 いざとなったら社長が必ず助けに来てくれる。 信じてる、だから平気なの。 痛みに耐えて手の中を覗き込むと、二色の光のせめぎ合いは続き、蒼い光が優勢に視えた……が、突如形勢は逆転した。 赤い光は炎となって蒼い光を焼き始めたの。 私に刺さる蒼い針も溶けて抜け落ち、勢いをつけた赤色は余す事なく蒼い光を焼き尽くしてしまったんだ。 はぁぁ、と息が漏れる、ホッとした次の瞬間、私は目を見開いてしまった。 ウソ……赤色の電気は菅野さんのポッカリ開いた胸の穴に入り込み、一瞬強い光を放った後、霊体(からだ)に馴染んで穴をキレイに埋めてしまったんだもの。 「か、菅野さん……胸の傷……ふさがったみたいです、ど、どうですか? 今も痛かったり苦しかったりしますか……?」 おそるおそる聞いてみる……と、菅野さんは口をポカンと開けたまま、顔を左右にフルフルフルフルと延々動かしていた。 良かった……うまくいった。 痛みがなくなってくれたんだ。
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