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『ふ、藤田さん、これ……どうなっているの? 胸が痛くなくなったし、穴も……胸の穴も……それに手の甲の穴もふさがった、藤田さんは、霊能者さんなの? こんな事が出来るなんて……そうなんだね?』
菅野さんの胸も手の甲も、社長の霊力が埋まり修復してくれた。
穴だった部分は赤くほのかに光っている。
うまくいって良かった……私は大きく息を吐いた。
社長の霊力だもの、治してくれると思っていたけど、私が失敗したら台無しになる、だからホッとした。
菅野さんは眉間のシワが無くなって、『痛くない』と喜んでくれている。
その笑顔を見てるとすごく嬉しくなる、で、でも、
「ち、ち、ち、違います! 私なんかが霊媒師さんのはずがないです! わ、私は”おくりび”に入社したばかっかりの事務担当で、こ、この赤い光は、私の霊力じゃなくて、社長の霊力なんです。だ、だからすごいのは社長で、私じゃないの」
誤解は解いておかなくっちゃ。
私なんかなんにもしてないのに、こんなに褒められたらなんだか居心地がワルイ。
『社長さんのチカラ? ん、でもそれを使ってくれたのは藤田さんだ。ありがとう。……実を言うとね……胸の傷はひどく痛かったの。なのに今はぜんぜん痛くない。幽霊じゃあ病院にも行けないし、ずっとこのまま苦しむのかと怖かった。藤田さんが救ってくれたんだ、』
私が救った……?
ううん、本当は違うけど、それでもこんな風に言ってもらえるのは、社長が褒められてるみたいで嬉しい。
それに……霊媒師の仕事の……ほんの一部だけど、それが分かったような気がする。
社長はこういう仕事をしてるんだな。
死者と関わり死者を救う仕事、一般的じゃないかもしれないけど、こうやって困っている死者の方がいるのだもの、生死は関係ない。
人を助ける良い仕事だ。
嬉しそうに笑う菅野さんと目を合わせ、私も一緒に笑ってしまう。
笑いながら、もう一つ考えている事があった。
もう一回、社長の霊力を借りられないかな。
菅野さんの、無くなってしまった足を元に戻してあげられたらいいのに。
そう思うのに、ペンダントを握りしめて強く願っても、私の手が赤く光る事は、もうなかった。
「……ごめんなさい。足も治せたらよかったのに、」
私がそう言うと、
『大丈夫だよ、胸だけで十分ありがたい。……本当はね、少し恨んでいたんだ。朝のお客さん、どうしていきなり私を撃ったのだろうって。そりゃあウルサかったかもしれない。でも……ここまで酷い事をされる程だろうか、私はただ直樹の傍にいたいだけなのにって、』
菅野さんはポツリポツリと話をしてくれた。
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