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覗いた先、女子更衣室の中はグチャグチャだった。
テーブルが明後日の方向に追いやられ、窓のブラインドは崩れてる。
壁掛け時計は下に転がり、クッションは破れて中身が飛び出ていた。
お菓子は散らばり、それから誰かのお酒もバラバラに倒れてるよ。
まるで部屋の中を台風が通ったあとみたい。
しかも……どうして女子更衣室に社長と岡村さんがいるの……?
とりあえず……声を掛けてみようかな。
「あの……おはようございます、これ一体なにがあったんですか?」
開けっ放しにのドアに立ち、もう一歩踏み出して中を見て唖然としてしまう。
本当に何があったんだろ。
社長と岡村さんともう一人、女性の方がいる。
あの方が小野坂さんだろうか。
何も言えずに立ったままでいると、社長が声を掛けてくれた。
「おぅ、ユリおはよう。悪いな、野郎が女子更衣室にいて驚いたろ? すぐ出てくからな」
いえ、大丈夫です、そう答えようと口を開きかけた時、傍にいた岡村さんが両手を合わせて私に言ったの。
「ユリちゃん、ごめんね。僕らすぐに出るから! 女子更衣室に入ったのには訳があってね。それにこんなに散らかしてごめん!」
「訳があるんですよね? 大丈夫ですよ、部屋の中も私が片付けておくから心配しないでください」
そう答えたけど、確かに驚いた。
部屋の様子も、女子更衣室に男性二人がいる事も。
だけど……それ以上に小野坂さんが気になって仕方なかったの。
この方が……菅野さんに酷い事をしたんだ。
正直、腹が立った。
あんなに良い人を襲うなんてあり得ないと。
でも、小野坂さんから事情を聞いていない段階で、あれやこれや思うのは良くない事で、私は怒りをグッとおなかにしまい込んだんだ。
社長は、はぁっと小さくため息をついた後、
「ミューズ、エイミー、下の事務室行くぞ。そこでちょっと話そうや。それからユリは更衣室の片付け頼むわ。片付けるのは始業時間過ぎてからでいいからな。終わったら事務室に来てくれ」
そう言って更衣室を出て行った。
そのあとを岡村さんと小野坂さんが追っていく。
残された私は、社長と同じく小さくため息をついた。
片付けるのはぜんぜん構わない。
ただ、この惨状はきっと小野坂さんに関係する事なのだろう。
社長が8時半ギリギリに来い、と言った意味がわかった気がした。
それに加えて菅野さんの件もある。
うまく……付き合っていけるかな、
自信……ないな。
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エイミー視点の女子更衣室のシーンがココです(*´з`)
https://estar.jp/novels/24474083/viewer?page=413&preview=1
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