第十九章 霊媒師 入籍

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「ちょっとどういうこと? 社長も水渦(みうず)さんもハッキリ言ってくださいよ。遠回しすぎてわからないんですけど」 えーーっ!? お、岡村さんって恋愛関係は鈍感なのかな。 ぜんぜん遠回しじゃないし、むしろそのままだし、自分で言うのもなんだけど、わかりすぎると思うけどな。 ハテナマークを浮かべる岡村さんに、 「ですから、ユリさんの男を見る目は節穴だって事です」 と小野坂さん。 「そんなことねぇよ、ユリの目は確かだ。ただ年が離れすぎてる」 と社長、なんだけど……年なんて大した問題じゃないですよ。 たった16才しか離れてないじゃないですか。 16と言ったら、ほら、社長が高校一年生の時に私が生まれ……って、やっぱり深く考えるのはやめましょう。 んーダイジョブです、近い近い! 「だから、もうちょっとわかりやすくお願いしますって」 えぇ……? 岡村さん、まだ言ってるよ。 ウソでしょ?  さすがにわかってるんでしょ?  それとも私に言わせようとしているの?  うぅ……そうとしか思えない。 も、もういいや……! いつまでも私抜きで私の話をされるのは、つ、辛いもん。 私は三人の輪の中にススッと入り、小さな声で言ってみた。 「簡単に言うと、社長は爺ちゃんと同じくらいカッコイイってことです」 い、言っちゃった……! ドキドキしながらチラリと社長を見てみれば、はぁっと溜息をついて顔を手で隠してしまった。 岡村さんは口を開けたまま私と社長を交互に見てるし、小野坂さんは、ふーっと呆れたように息を吐いた。 そんな二人に見つめられ、何か言わなくちゃと思ったけど、 「片想いなの」 これだけ言うのが精一杯だ。 ボンッと体温が上昇する。 手のひらは汗で湿って、顔も耳も首まで熱くなってしまった。 私……今、真っ赤なんだろうな。 田舎の子供みたいになってるかも……恥ずかしいよ。 なにか冷やすものはないかな、と、目だけでキョロキョロしていたら、丸くてフワッフワの大福ちゃんがテチテチと来てくれたんだ。 それで、冷たくてプニプニの肉球を熱いほっぺにくっつけてくれたの。 「ひんやりして気持ちイイ……大福ちゃん、アリガト」 『うなぁん』 可愛く返事をしてくれてた大福ちゃんの二股尻尾。 柔らかそうなモフモフだなぁと眺めていたら、開いたV字がゆっくりと丸まって尻尾の先が重なった。 あ……ハートだぁ! 真っ白でフワフワで、まるで青空に浮かぶ雲をちぎって作ったみたい。 可愛いなぁ。 大福ちゃんは『うなぁん』としか言わないけど、なんだか『がんばれ』と励まされたように思えたの。 …………うん、そうだよね。 想いは知れてしまったんだもの。 ジタバタしたって始まらない。 ちゃんと伝えよう。 どうして好きになったのか、どんなに好きなのか。 どうせ振られるなら、ぜんぶ話してしまおう。
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