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社長の目……怖いくらいに真剣だ。
私に好きと言われて困っているはずなのに、事務所でも困った顔をしてたのに、それなのに、嫌な顔もしないで向き合ってくれている。
ああ……キレイな目だなぁ。
今この瞬間、社長の目に映っているのは私だけ。
ドキドキする。
顔が熱くて、耳も熱くて、嬉しくて、切なくて、そのうち溶けてしまうかもしれない。
もし……目の前で、私が溶けて消えてしまったら、社長はどんな顔をするんだろう?
驚くかな、慌てるかな、探してくれるかな、淋しいと思ってくれるかな?
「ユリ、」
頭の中で想像が膨らんで、だけど社長の声に引き戻された。
社長はなんて言うだろう?
ううん、本当は分かってる。
”ごめんな、ユリとは付き合えない” だ。
このあと、私は振られるんだ。
恋愛対象じゃないもの、きっとそんな目では見れない、ユリを好きになれないって言われるの。
それをわかってて”好き”と言ったんだ。
覚悟は出来てる。
「……はい、」
ズキズキ痛む鼻、目の奥が熱くなる、涙が出ないように気持ちを張る。
そんな私を見た社長は困ったように笑い、ふぅと短い息を吐いた。
目を閉じて、一呼吸おいて、もう一度目を開いて、それで、それで、こう言ったの。
「ユリ、ありがとな。俺なんかを好きになってくれてよ」
ううん、ううん、
私が勝手に好きになっただけ、そのせいで社長を困らせてしまっているのに、ありがとうなんて言ってくれて、私、なんて答えていいかわからないよ。
「お前は一生懸命だ。仕事を早く覚えようと人一倍努力してるよな。俺は頑張るヤツが好きだ。特におまえはまだ18なのに、家族もいなくて辛いだろうに、いつも笑ってよ。だから応援したくなる、守ってやりたくなる、俺に出来る事はなんでもしてやりたくなる、」
真剣で優しい顔だった。
いつもの大きな声じゃなく、囁くように、私だけに聞かせるように、丁寧に話してくれる。
社長の言葉の一つ一つが私に沁みて、大声で泣きたくなってしまう。
「だけどな……俺のユリに対する気持ちは恋愛とかそういうんじゃねぇんだ。前にも言ったが保護者の感覚が強い。だがある意味恋愛感情よりも深い。おまえはさ、俺にとって守るべき人間なんだよ」
”まもるべき人間” ……、向かいに座る社長は身を乗り出して私に言った。
わかってくれと目が訴えている。
ん……だいじょうぶ、社長の言いたい事はわかるし、ありがたいです。
本当に、感謝です。
家族じゃないのに、ただの社員なのに、恋人でもないのに、それでも守りたいと思ってもらえるなんて、これ以上ありがたいコトはないですよね。
わかっているのに、気持ちを伝えられたらそれでいいと思っていたのに、なんでこんなに辛いんだろう?
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