第十九章 霊媒師 入籍

84/102
前へ
/2550ページ
次へ
顔を赤くさせた社長は、目を真ん丸にして額の汗を拭っている。 もしかして……照れているのかな……? 二人でいてもドキドキするのはいつだって私だけ。 社長は大人で余裕があって、狭い車で隣り合っても心を乱したりしない。 それなのに…… 私と社長の間で沈黙が続く中、机の上から花壇に降りた大福ちゃんは、のんびりテチテチ、お花の匂いを嗅いでいた。 社長はそんな大福ちゃんをチラリと視て、それから私のコトもチラリと見て、目が合ってすぐに逸らして上を向いた。 そのまま黙っているのかな……と思っていたら、 「……ユリ、おまえ……なに言ってるんだよ、」 赤い顔はそのままに、上を向いた社長が言った。 だから私は、社長の太い首を見ながら答えたの。 「……なにって……社長がわかってくれないから……私の気持ちを伝えたんです」 「わかってくれないって……そんなコトねぇよ、……あのな、目ぇ覚ませ。俺は34のオッサンだそ? ユリにはよ、そのうち年の近い、もっとイイ男が現れる」 そろりそろりと顔を下げ、片手で額を押さえる社長は、私にはもっと別な男性(ひと)が現れると言う……やだ、やだな、 「……そういうコト……言わないでほしいです。そんな男性(ひと)、現れません、……もし現れたとしても、私が好きなのは社長だもの、他の誰も好きになんてなりません」 他の人を好きになんてなれない。 私は爺ちゃんみたいな男性(ひと)が好きなんだもの。 そんな男性(ひと)、世界中探しても社長だけだ。 「そ、そうなのか? ……あぁ、いや、ちがくて、……や、だからな、」
/2550ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2371人が本棚に入れています
本棚に追加