2371人が本棚に入れています
本棚に追加
顔を赤くさせた社長は、目を真ん丸にして額の汗を拭っている。
もしかして……照れているのかな……?
二人でいてもドキドキするのはいつだって私だけ。
社長は大人で余裕があって、狭い車で隣り合っても心を乱したりしない。
それなのに……
私と社長の間で沈黙が続く中、机の上から花壇に降りた大福ちゃんは、のんびりテチテチ、お花の匂いを嗅いでいた。
社長はそんな大福ちゃんをチラリと視て、それから私のコトもチラリと見て、目が合ってすぐに逸らして上を向いた。
そのまま黙っているのかな……と思っていたら、
「……ユリ、おまえ……なに言ってるんだよ、」
赤い顔はそのままに、上を向いた社長が言った。
だから私は、社長の太い首を見ながら答えたの。
「……なにって……社長がわかってくれないから……私の気持ちを伝えたんです」
「わかってくれないって……そんなコトねぇよ、……あのな、目ぇ覚ませ。俺は34のオッサンだそ? ユリにはよ、そのうち年の近い、もっとイイ男が現れる」
そろりそろりと顔を下げ、片手で額を押さえる社長は、私にはもっと別な男性が現れると言う……やだ、やだな、
「……そういうコト……言わないでほしいです。そんな男性、現れません、……もし現れたとしても、私が好きなのは社長だもの、他の誰も好きになんてなりません」
他の人を好きになんてなれない。
私は爺ちゃんみたいな男性が好きなんだもの。
そんな男性、世界中探しても社長だけだ。
「そ、そうなのか? ……あぁ、いや、ちがくて、……や、だからな、」
最初のコメントを投稿しよう!