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社長の額から汗が流れる、私はそれを目で追っていた。
テーブル、もっと小さかったらよかったな。
手が届くなら、指で拭ってあげたいのに。
汗を垂らして、顔を赤くして、動揺が隠せない。
こんな社長を見るのは初めてだ。
あぁ……生意気でごめんなさい。
今、私は社長が愛しくてたまらない。
だからこそ……
「……わかってほしいです。錯覚なんかじゃないんです。私は____」
届いてほしい、錯覚でも、恋愛ごっこでもないの。
気持ちは本当なの。
「____私の誕生日は10月です。今は4月で、あと半年もすれば19才になります。今より一つ大人になるんです。……私は、私自身が思うより、そうありたいと願うより子供なのかもしれません。で、でもきっと、社長が思うよりは子供じゃない。いっそ社長が言うように、この気持ちが錯覚だったらどんなに楽だったろう。そ、そうじゃないから、心の奥から好きだから、く、苦しくて、切なくて、なのに……やっぱり幸せなんです。気持ちが錯覚じゃないから、」
伝わるかな、わかってもらえるかな、
声が震えた、途中で何度かつっかえた、
だいじょうぶかな、どうかな、
社長の顔はますます赤くて、だけど上を向いたりしなくって、正面から私の話を聞いてくれた。
徐々に表情が変わっていって、困ったような顔じゃなく、真面目で、真剣な目を私に向ける。
途端心臓が躍り出し、こんな時でもドキドキしてしまう。
こんなの……錯覚のはずがないじゃない……
私の心を乱すばかりの社長は、静かに、ゆっくりと……やっと、こう言ってくれたんだ。
「そうか……言いたい事はちゃんと伝わったよ。……悪かったな、おまえの真剣な気持ちを錯覚だと決めつけていた、」
と。
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