第十九章 霊媒師 入籍

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「ねぇ、社長。なにか気が付きませんか?」 ママを失った幼い私は爺ちゃんの言葉に救われた。 あれから11年、今では爺ちゃんも婆ちゃんもいない。 ひとりぽっちの今の私は社長に救われた。 ただ……当の本人はまったくそんな意識がないみたいだけど。 知ってほしいな、どうしてこんなに好きになったのか。 伝えたくてたまらなくて、テーブル越しに身を乗り出して社長の顔を覗きこんだ。 社長は身体が大きいのに、怖いモノなんて何もないように見えるのに、少しだけ縮んだ距離に驚いた顔をした……けど、すぐに穏やかに笑ってこう言ったんだ。 「ん? なにがだ?」 なにを言ってるのかわからない、そんな顔の社長はなんだか少し子供に見えた。 「もう、やっぱりわかってない」 私はわざと頬を膨らまし、大げさに呆れてみせる。 すると社長は少し慌てて、 「なんだよ? なにがわかってないんだよー、あ、なんだぁ? その顔はぁ。なんだよ、教えろよ、気になるじゃねぇか」 と身を乗り出してきた。 それがすごくおかしくて、私はちょっぴりイジワルをしたんだ。 「すぐには教えてあげません。よーく思い出してください。爺ちゃんが私に言ってくれた言葉……それがヒントです」 さっき言ったもの、思い出したらすぐにわかるはず。 私がどんなに嬉しくて救われたか。 「真さんが言ったコト? んー、なんだ? わかんねぇよ。ユリ、もういっこヒントくれ! な? な?」 両手を合わせてヒントをおねだりする姿は、ぜんぜん年上に見えない。 ねぇ、社長。 年の差ってなんなんでしょうね? 案外、どうってコトないのかもしれませんよ? 「えぇ? これ以上言ったらすぐにわかっちゃいます。私……社長に思い出してもらいたいです」 と、もったいぶってみた。 これはイジワルかな? ふはは、イジワルだな。 ごめんなさい、いいよね、ちょっとだけだもの。 それに社長も笑ってる。 「なんだよ、それ……ああ、もう、わかったよ! もうちっとだけ考えてみっから大人しく待ってろ!」 負けず嫌いな社長は、腕を組みウンウン唸って考え込んで……こんななんでもないやり取りが楽しくて、 「はい!」 答えた私の声は弾んでいた。
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