第十九章 霊媒師 入籍

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泣きながら社長の手指をそっと掴んだ。 優しい人だもの、きっと咎めたりしない。 私は掴んだ指を大事に包み、自分の額にあてて顔を伏せた。 社長は……やっぱり咎めたりしなくって、私に手指を預けたまま、静かな息遣いだけを聞かせてくれた。 社長はすごいなぁ、これだけで私の気持ちを落ち着かせちゃうんだ。 少しの間そうやって、それで、そのあと社長は私にこう言ったの。 「顔隠すな、こっち向け。おまえの気持ちはよくわかった。今度は今の俺の気持ちを聞いてくれ、」 社長の今の気持ち(・・・・・)、知りたい、 それがどんな気持ちでも、本当の気持ちが知りたいよ、 緊張で手のひらが熱くなる、私、また泣いちゃうかな……と思っていたその時、 「俺は____っと、ユリ、ちょっとだけ待ってろ。すぐに済むからな」 社長は優しく笑って手を離すと、椅子から立ち上がったの。 テーブルをまわり込み、私の前に立つと背中を向けた。 なに……? どうしたんだろう……? 訳がわからなくて、私はただ大きな背中を見つめていた。 社長はまるで喧嘩の準備体操のように、ポキポキと指を鳴らし、首も鳴らし始めた。 そしてスゥーーーーっと大きく息を吸って、 「オイィィィィ!! ミューズゥゥ!! それからエイミーも一緒かぁぁ!! おまえらそこで隠れて俺達のこと霊視(のぞいて)るだろう!! 今すぐヤメロッ!! でないと後悔することになるからなぁぁっ!!」 耳がビリビリするような大声を出したんだ。 …… …………え? 社長は今なんて言ったの? 小野坂さんと岡村さんが覗いてる……? 私達を? 一体どこから? だって庭には誰もいない、二人は今事務室に……あ、 あ、……あ、あ、あーーっ! そうだよ! あの二人は霊媒師だもん! 霊視くらいお手の物、 というか霊視が出来なきゃ仕事にならない、 それにさっき言ってたじゃない! 小野坂さんは人を勝手に霊視(のぞく)って! うそ……今の……ぜんぶ視られてたの……? ぶ、ぶにゃは、ぶにゃははは……、 ダメ、恥ずかしくって倒れそうだよーーっ!   ★このあと水渦(みうず)とエイミーは社長にこっぴどく怒られます。 そのシーンがこちらです(*‘ω‘ *) https://estar.jp/novels/24474083/viewer?page=438&preview=1
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