第十九章 霊媒師 入籍

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ハチミツが溶け込んだ事務室の中。 ふと会話が途切れ、私と社長は口を閉ざして見つめ合った。 ドキドキする……お付き合いを飛び越えて、結婚する……と社長は言ったけど、正直実感がないの。 ただ、これからも社長と一緒にいれるんだなぁって、それが嬉しくて幸せで、私はどうにかなりそうだった。 「ユリ、明日からは私服でいいからな。靴もスニーカーとかよ、痛くならねぇヤツ履いてこい」 「はい」 「それから早いとこ二人で住むアパートを探そう。おまえの部屋、1階だから心配なんだよ」 「一緒に……? は……はい!」 「それとよ、さっきは驚いたか? おまえに何も相談もしてねぇのに結婚するなんて言ったからな」 「…………驚きました」 「だよなぁ……悪かった、驚かせて。だがな、俺は遊びで付き合う気はさらさらねぇ。だとすればこれが当たり前の事だと思ったんだ。なぁユリ、俺と結婚すんの嫌か?」 「や、や、やじゃない!」 「そうか、良かった。それじゃあ明日にでも、指輪買いに行くぞ」 「ゆ、ゆ、ゆ、ゆびわ!? いいです! そ、そんなの贅沢ですっ! 私、社長と一緒にいられたらそれでいいの、」 「何言ってんだ、別に贅沢じゃねぇだろ」 「だ、だって……ゆびわしたコトない……校則で禁止だったから」 「校則か……そうだよな。つい先月まで学生だったんだもんな」 「ご、ごめんなさい」 「ははっ! なんで謝んだよ。なぁユリ、これから二人でいろんな所に行こう。俺、車の運転好きだしよ。疲れたらかわりに運転してもらう。ユリならマニュアル車も大丈夫だからな。いいか?」 「は、はい!」 「それと指輪は買うぞ。ピカピカのダイヤモンドだ、きっとユリに似合う。あとは……結婚指輪? 二人お揃いのヤツもな」 心臓がもたないよ……社長は今まで以上にドキドキさせる。 嬉しくて、幸せで、泣いてしまいそう。 「……なぁユリ、……ああ、その、なんだ。なんていうかよ……おまえだったんだな、」 あ……社長の顔、赤い? 夕焼けだけじゃない、顔が、耳が、首が、真っ赤になっている。 「昨日まで……いや、今朝まで俺は、おまえの保護者だった。真さんに頼まれたのもあるけどよ、なんにでも一生懸命なおまえと過ごすうちに、俺は俺の意志でおまえを守りたいと思うようになっていた。だがそれはあくまで保護者としてだ、」 ここで一度口を閉じた社長は、力強い目で私を見た……けれどすぐに力が抜けて……気のせいかな……? 目にうっすらと透明な膜が滲んでいるように見えたんだ。 「なのによ、ユリの真剣な想い、ウソのねぇ涙。気持ちをよ、一生懸命俺に伝えようとしたよな。そんなおまえを見ていたらな、保護者だったはずなのに、気づけばストンと落ちていた。(わり)いな、こうなったら最後、とことん好きになる。ユリ、俺の命はおまえのものだ」 社長の命は私のもの____ 「ああ……ん、……ぅぅ……しゃ、社長……わ、私、う、嬉しいです、す、すごく幸せです、わ、私は、もうとっくに落ちてます、わ、私の命も、社長のものです、」 もう無理だった、これだけ言うのが精一杯で、涙が、嬉しいの涙が溢れてとまってくれないの。
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