第十九章 霊媒師 入籍

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◆ …………リ、 ……ユ……リ…… …………ユリ…………、 誰かが私を呼んでる……やだ……起きたくないよ…… 夢なら覚めないでってお願いしたのに…… ……ユ……ユリ…… ……ユリ…… ……ユ…… 「ユリ、」 あ……この声は…… 「……マコちゃん、」 車の助手席。 倒れたシートで目を開ければ、私をのぞきこむマコちゃんがいた。 「ユリ、会社に着いたぞ。起きられるか? 」 「……ん……起きる……私……また寝ちゃった」 今日こそは、寝ないでおしゃべりしたかったのに。 なんでいつも眠くなっちゃうんだろう……もったいない。 会社裏手の駐車場。 いつもの場所に車を停めたマコちゃんは、運転席に座ったままドアを開けようとしない。 かわりに…… 身体をこちらに向けて、腕が伸びてきたなと思ったら、グズグズと横になる私の前髪を撫ぜてくれた。 「マ、マコちゃん、誰か来たら見られちゃうよ、」 慌てて起きてこう言ったのに、大人のマコちゃんは涼しい顔なの。 「大丈夫だ。この時間じゃあ、ウチの連中は誰も出勤してこねぇ。そんな事より体調は大丈夫か?」 「うん、ぜんぜん大丈夫。すごく元気だよ。……マコちゃん、またシート倒してくれたんだね」 「ああ、よく寝てたからな。信号待ちで倒しておいた」 「そ、そか。ありがと」 マコちゃんはよくこれをする。 私が助手席で寝てしまうと、起こせばいいのにそうはしなくて、車が止まったタイミングでシートを倒すんだ。 それで、ジャケットを上からかけて、起こさないようにしてくれるの。 「私、本当は寝ないでおしゃべりしたいのになぁ」 いつだって眠いのは私だけ。 マコちゃんは私よりももっと早起きなのに。 ____己の欲に呑まれる所だった……! 結婚しようと決めたあの日。 私にキスしようとしたマコちゃんはこう言って、”己に打ち勝つ為!”と、毎朝早くに起きている。 早朝から走り込みとベンチプレス、それからお義父さん相手に組手の特訓をしてるんだけど……私には起きてこなくていいと寝かせておいてくれるんだ。 マコちゃんは眠くないのかな。 無理してないのかな。
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