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「マコちゃんこそ体調は大丈夫? だって私より早起きだし、朝も夜もトレーニングしてる。一日会社で仕事もして、行きも帰りも運転して……本当は疲れてない? 無理して……もしもマコちゃんが先に死んじゃったら……わ、私……」
想像だけで悲しくなって、涙がじわじわ出てしまう。
”泣くな”と言わないマコちゃんに甘えている私は、前よりもっと泣き虫になってしまった。
「大丈夫だ、体調はまったく問題ない。俺は元霊媒師だからな。現場に出れば移動距離はもっとある。進捗によっちゃあ徹夜もザラだ。相手が聞き分けのねぇ幽霊なら、力尽くでいかなきゃなんねぇ。社長業なんてよ、現場に比べりゃヌルいんだ。これくらいじゃあミリも疲れねぇよ。だから心配すんな。……っと、ユリ、ほらティッシュだ。鼻チーンしろ」
そう言ってマコちゃんは笑った。
その笑顔をじーっと見れば……うん、早起きだけど目の下にクマはない。
顔色も良いし目に力がある。
手を伸ばしてほっぺをさわってみれば、ホカホカとあたたかく、かといって熱いというんでもない……これなら大丈夫かな。
私にされるがままで大人しいマコちゃんは、
「健康チェックは終わったか? おまえは健康だけは口うるさいよな」
と大袈裟に肩をすくめた。
だから私も大袈裟にやりかえす。
「あたりまえです。マコちゃんにはうんと長生きしてもらわないと。私を一人にしないって約束したもの。ふははは、覚悟してくださいね。これからも、ずぅっと口うるさくするんだから、」
ふふん、とワザと威張ってみせた。
きっとマコちゃんは、”ヤレヤレ”と困ってくれるはず。
繰り返しのやりとりはいつものコトで、私はこれが楽しくてたまらない。
なのに今日は違ったの。
”ヤレヤレ”のかわりにマコちゃんが言ったのは……
「いつも心配してくれてありがとな。ユリ、大好きだ」
ああ……もう。
いつものふざけっこだと思っていたのに。
不意打ち、ダメ、たおれちゃう、
体温が一気に上がる。
手のひらに汗をかく。
耳までジンジン熱くなる。
一緒に住んで約二ヶ月。
家でも会社でも、毎日顔を合わせてるのに、いつだってドキドキさせられる。
私はもう、顔を上げているコトが出来なかった。
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