第十九章 霊媒師 入籍

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「ユリ、こっち向け。顔隠すな」 人の気も知らないマコちゃんは、俯く私をしつこいくらいに覗き込む。 (らん)さんにはそこまでしないのに、私が照れると面白がってからかうの。 マコちゃんの”特別”になる前は、こんなにからかったりしなかったのになぁ。 いつだって余裕で、落ち着いていて、なんて大人なんだろうと思ってた。 ううん、そりゃあ今だって大人だなって思うけど、だけど、こういう子供っぽいところも……ふはは、あるんだよね。 一緒にいればいるほど年の差が曖昧になる。 新しいマコちゃんがいっぱい出てくるんだ。 幸せだなぁ……からかわれても、しつこくされても、マコちゃんが楽しそうだと力が抜けて笑ってしまう。 「あ、笑った。よくわかんねぇけど楽しいか? おまえが楽しいと俺もなんだか楽しいぞ」 ふはは、今私もおんなじコト考えてた。 私、毎日笑ってる、毎日すごく楽しいよ。 「じゃあ、そろそろ行くか。忘れ物ねぇか? 婚姻届け持ってきたか?」 「うん、カバンの中に入れてある」 そう、いよいよ来週は市役所に行く。 二人は本当の夫婦になるの。 そのための婚姻届け、それを今日持ってきたのは…… 「岡村さん、こんなコト頼んだら驚いちゃうかな?」 私がそう聞くと、マコちゃんは笑いながらこう言った。 「あー、驚くかもなぁ。でもエイミーなら大丈夫だろ。ははっ! 下手すりゃアイツ、泣き出すかもしれねぇな」 あ、ありうる……すごく優しい人だもの。 岡村さんには感謝しかないよ。 ママを救ってくれて、 上京したあの日、道で私を見つけてくれて、 事務の欠員が出た時だってそう、 ____ウチの会社で働かない?  岡村さんが誘ってくれた。 岡村さんがいなかったら、私とマコちゃんは結婚しない。 それどころか……出逢う事も出来なかったと思う。 そしたら今頃、あのアパートで一人きり。 毎日きっと泣いていた。 岡村さんのおかげだもの。 だからお願いしたいんだ。 婚姻届けの私の証人は、岡村さんになってほしい。
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