第十九章 霊媒師 入籍

100/102
前へ
/2550ページ
次へ
婚姻届けの準備を始めた時。 書類に第三者の証人が必要だって、私もマコちゃんも知らなかったの。 夫側に一人、妻側に一人。 マコちゃんの証人は当然お義父さんになる。 お義父さんにはだいぶ前にお願いしたけど、「ユリちゃん、誠、おめでとう」と、目と鼻を真っ赤にしながら書いてくれたんだ。 私の方は……家族はいるけど現世にはいない。 どうしようと思った。 だけど調べたら、証人は家族以外に友達でも知人でも良いとあったの。 そか、家族じゃなくても良いのか。 それなら誰にお願いしたらいいかな? そう考えた時、私の頭には自然と岡村さんが浮かんでいた。 岡村さんがいたから今がある。 マコちゃんにそれを伝えると、 「そうだな、俺もエイミーがいいや」 一も二もなく賛成してくれたんだ。 「よし、じゃあよ、エイミーが来る前に一仕事済ますか」 マコちゃんはそう言うと、私のカバンを肩にかけ車のドアを開けた。 私も続けて外に出る。 「うわぁ……いい天気」 見上げれば青空は高く、朝の光が眩いくらいに輝いている。 菅野さんをお見送りした日も、こんな空だったなぁ。 「ユリ、準備はいいか?」 マコちゃんは言いながら、(つた)の絡まる建物に歩き出した。 私も後ろを行きながら「いつでも大丈夫だよ」と答える。 歩きながら、ブラウス越しのペンダントに手を添えた。 キレイなカットの赤い水晶。 これにはマコちゃんの血が沁み込ませてある。 その血をつなぎ(・・・)に、術者の……マコちゃんの霊力(ちから)が中に込められている。 霊の姿を視るしか出来なくて、放電すらまだ出来ない私だけど、水晶に閉じ込めた霊力(ちから)を引き出す事は出来るんだ。 菅野さんと会った事、菅野さんの怪我をペンダントのおかげで治せた事。 その話をした時、マコちゃんはしばらく黙って考え込んでいた。 「水晶の霊力(ちから)を言霊無しに、俺以外の人間が引き出せるなんて今までなかったんだけどな。しかも思業式神を出したんじゃねぇ。純粋に霊力(ちから)として使ったんだよな……よくそんな事出来たな、大したモンだよ。おまえ、やっぱり霊媒師になるか? ……いや、いやいやいや! やっぱりダメだ。危険だし、泊りもあるし、心配でさせたくねぇや」   
/2550ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2371人が本棚に入れています
本棚に追加