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婚姻届けの準備を始めた時。
書類に第三者の証人が必要だって、私もマコちゃんも知らなかったの。
夫側に一人、妻側に一人。
マコちゃんの証人は当然お義父さんになる。
お義父さんにはだいぶ前にお願いしたけど、「ユリちゃん、誠、おめでとう」と、目と鼻を真っ赤にしながら書いてくれたんだ。
私の方は……家族はいるけど現世にはいない。
どうしようと思った。
だけど調べたら、証人は家族以外に友達でも知人でも良いとあったの。
そか、家族じゃなくても良いのか。
それなら誰にお願いしたらいいかな?
そう考えた時、私の頭には自然と岡村さんが浮かんでいた。
岡村さんがいたから今がある。
マコちゃんにそれを伝えると、
「そうだな、俺もエイミーがいいや」
一も二もなく賛成してくれたんだ。
「よし、じゃあよ、エイミーが来る前に一仕事済ますか」
マコちゃんはそう言うと、私のカバンを肩にかけ車のドアを開けた。
私も続けて外に出る。
「うわぁ……いい天気」
見上げれば青空は高く、朝の光が眩いくらいに輝いている。
菅野さんをお見送りした日も、こんな空だったなぁ。
「ユリ、準備はいいか?」
マコちゃんは言いながら、蔦の絡まる建物に歩き出した。
私も後ろを行きながら「いつでも大丈夫だよ」と答える。
歩きながら、ブラウス越しのペンダントに手を添えた。
キレイなカットの赤い水晶。
これにはマコちゃんの血が沁み込ませてある。
その血をつなぎに、術者の……マコちゃんの霊力が中に込められている。
霊の姿を視るしか出来なくて、放電すらまだ出来ない私だけど、水晶に閉じ込めた霊力を引き出す事は出来るんだ。
菅野さんと会った事、菅野さんの怪我をペンダントのおかげで治せた事。
その話をした時、マコちゃんはしばらく黙って考え込んでいた。
「水晶の霊力を言霊無しに、俺以外の人間が引き出せるなんて今までなかったんだけどな。しかも思業式神を出したんじゃねぇ。純粋に霊力として使ったんだよな……よくそんな事出来たな、大したモンだよ。おまえ、やっぱり霊媒師になるか? ……いや、いやいやいや! やっぱりダメだ。危険だし、泊りもあるし、心配でさせたくねぇや」
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