第十九章 霊媒師 入籍

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「マ、マコちゃん落ち着いて。私なんかじゃ霊媒師さんにはなれないよ。それにもし……なれたとしてもならない。私は事務の仕事を頑張るの。マコちゃんが安心して現場に行けるように、たくさんの仕事を抱えなくていいように。 そのうちの一つ、会社の結界。私一人じゃ霊力(ちから)不足で張れないけど、マコちゃんの霊力(ちから)を借りれば、」 ペンダントから手を離す。 視ればあの日のように、両手は赤く光っていた。 どうしてこんなコトが出来るのか、いまだはっきりわからない。 ただ、霊力(ちから)を取り出せるのはマコちゃんのだけなんだ。 ためしにと、岡村さんと先代と(らん)さんにお願いして、それぞれの霊力(ちから)を水晶に入れたけど、結局誰の霊力(ちから)も取り出す事は出来なかった。 私も含め、みんな首を傾げていたけど、途中でマコちゃんが飽きちゃったのと、目をキラキラさせた先代の『こ、これは愛のチカラだよっ、きゃっ!』というお言葉で、なんとなく納得しちゃったんだ。 ふはは、そんなんでいいのかなって思ったけど、もし本当に愛のチカラならいいなぁって、嬉しいなぁって。 マコちゃんの役に立ちたい、助けになりたい。 二か月前、結界を張れるようになってくれと言われてから、ずっとそう願ってた……ペンダントだけあってもだめ、私ひとりじゃもっとだめ。 でもね、一人じゃ無理でも、二人なら出来るんだから。 すうっと鼻から息を吸う。 ふぅっと口からそれを吐く。 ヘンな焦りはない、慌てたりもしていない。 今日で5回目。 最初はうまく出来なかった。 半分流し込んだところで、霊力(ちから)に負けて弾かれて、尻もちをついたんだ。 だけど回を重ねるごとに、そういうのが減ってきた。 失敗したって怒られない。 そんなコトで怒る人じゃない。 何度だって挑戦させてくれるんだ。 私は植物結界の起点にしゃがみ、両方の手のひらを地面につけた。 振り向けばマコちゃんがそばにいて、「気楽にやれや」と笑ってる。 うん、と頷き見上げれば、(つた)が風に揺れていた。 「今、あげるからね」 言葉にすれば自然と流れが生まれてくれる。 手に溜めた大きな霊力(ちから)は、私の中を通り抜け、(つた)に向かって走り出した。 で……出来た……かな……? 時間にしたらほんの数分。 水晶から取り出したマコちゃんの霊力(ちから)は、すべて(つた)に流し込んだ。 今日は霊力(ちから)に負けなかった。 弾かれず、尻もちもつかず、最後まで流しきったと思う。 「マコちゃん、終わったよ。今日はたぶん大丈夫だと思うけど……チェックして、届いてない所があったら補充してください」 立ち上がり振り向いて、マコちゃん先生に採点をお願いすると「わかった、」と言って、(つた)をゆっくり見てまわる。 私はその間に手を洗い、ドキドキしながら結果を待っていた。
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