第二章 霊媒師面接

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枯れ木のような先代の手が、汗ばむ額からゆっくりと離れていった。 どうやら霊視が完了したようだ。 先代は清水さんに向き直ると、 『今の聞いた? 清水君』 「聞きましたよ、先代。お客様相談って要はクレーム処理班ですよねぇ? という事は対人スキルもあるってことですよ」 『そうだねぇ。ふふふふ……』 「そうですねぇ。ふふふふ……」 なんだろう、この二人の意味ありげな笑いは。 あっ、もしかして僕の職歴にがっかりして、笑うしかない状況なのだろうか。 確かに霊媒師とはまったく関係ない仕事だからなぁ。 ほんの少し霊能力があるからって(まだ僕に実感がないけど)、これじゃあ使えないって思われたのかもしれない…… なんだかこの流れに既視感を感じるぞ。 内定かなぁって思わせておいての不採用通知ってパターンを、僕はいくつも知っている。 勝手な想像で落ち込んでいる僕の前に、バサバサっとたくさんの書類が積み上げられた。 ハッとして顔を上げると、頭にLEDを映り込ませた清水さんが破顔して立っていた。 「岡村君! これ入社手続きの書類! うちの会社、お客様情報の取り扱いがあるから誓約書も! あと年金とか保険の継続手続きは早い方がいいから来週頭には提出してね!」 「書類の提出って事は……僕はもしかして……」 「そう! 今日から『株式会社おくりび』の社員! 霊媒師見習いの研修生だ! おめでとう、そしてヨロシク! 覚えてもらう事がいっぱいあるけど頑張ろうな! あ、岡村君の名刺発注しなくちゃ!」 「は、はい! ありがとうございます! 頑張りますのでよろしくお願いします!」 僕は嬉しくてガバッと立ち上がると前屈の測定バリに頭をさげた。 ニヤニヤがとまらない。 ああ! やった! やったぞ! 嬉しいぞ! 仕事が決まったんだ! 長くて辛かった無職生活が、今、終わったんだ! 先代は幽霊だし社長も格闘系スキンヘッドで、なんだか少し変わった会社だけど、拾ってくれた先代に感謝して霊媒師の仕事を一生懸命頑張っていこうと思う。 そりゃ少しは不安だけど、大丈夫、なんとかなるさ。 だってみんな言うだろ? 霊媒師、平たく言えば技術職。 って、言わないか。 ひゃっほう!
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