第二十章 霊媒師 瀬山 彰司

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シェルターというのは大袈裟だとしても、何か事情はあるのだろうな。 失礼にならないよう気を付けながら観察すれば、肌の色は白いものの不健康といった感じではない。 僕より少し背が低く、僕と似たり寄ったりの細い体型。 クセのない真っ直ぐな黒髪、その黒髪と同じ色の瞳は角度によって濃紺にも見える。 整った顔立ちは憂いを含むが悲壮感はない、……よって、緊急性や事件性は感じないんだけど…… なんだか引っかかる。 聞いてみようかな。 なにか事情があるんじゃないの?  久しぶりの太陽で気分が悪くなったりしないの?  って。 だけどな、いきなりそんなコトを聞いたら、大きなお世話かな。 キレイな子だし、実はモデルさんで、日焼けにめちゃくちゃ気を付けてるのかも。 や、でも、もしそうなら日傘も帽子も無しにココにいないよね。 そもそも何も持っていない、カバンも、スマホも。 謎が多いな……もう少し話して様子を見るか。 とは言うものの、初対面の、しかも10は年下かと思われる若者に何を話していいかが、やっぱりわからない。 このまま黙っているのもなんだし、抱いてしまった疑問をマイルドに聞いてみた。 「雨だけじゃなくて、太陽の光も久しぶりなんですか……?」 失礼ですがどういったご事情で?  と、続けたいのを一旦我慢した。 なんたって初対面、会ってまだ間がなさすぎ。 ズカズカ行かずに少しずつ聞いた方がいいだろう。 「はい、久しぶりです。雨も、太陽も、風も、なにもかも。……そうですねぇ、最後に目で見て、身体で感じたのは……11年前が最後、です」 じゅ、じゅ、11年前が最後……? しかも雨と太陽だけじゃなかった。 風もなにもかも……? え、ちょ、どうしよ、言ってる意味がわからないよ。 この11年、どこでどんな生活をしていたの? 太陽の光が届かない場所ってどこ? てかあるの? そこがどこだか知らないけど、だからそんなに色が白いの?
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