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途中からではあるけれど、薄っすらと予感はしてたんだ。
”希少の子”を知っていて、”自然の雨”が久しぶりで、”雨”も”太陽”も”風”も、”目で見て”、”身体で感じた”のは……”11年前が最後”、だなんて、生者ではありえないもの。
この人が……瀬山彰司さんなんだ。
僕より先に、”希少の子”として生まれた人。
強い霊力を持ち、その霊力を自在に操り、そして霊力に苦しめられた人。
「……あの、初めまして。岡村英海と申します。僕も……その、瀬山さんのお話は先代から聞いています。瀬山さんは、伝説級の霊媒師だったって、」
そう、先代が言っていた。
いまだ瀬山さんを超える霊媒師はいない。
霊力の量も、技術も武術も交渉術も、だ。
僕がそう言うと、瀬山さんは嵐さんのように頬を染め、大きく首を横に振った。
『平ちゃんは大袈裟だ。そんな大層なものではないよ。私は生まれてから死ぬまで、ずっと、ただの一霊媒師だもの。立場は今の岡村さんとおんなじ』
いやいや、同じじゃないでしょ。
人生の分岐がいくつか違っていたら。
本来の瀬山さんは、日本で一番チカラを持っている霊媒師軍団、瀬山一族の長になるはずだったじゃないですか。
と……喉まで出かかったのをどうにか飲み込んだ。
だって……それを言えば、どうしたって悲恋の心中話に繋がってしまう。
生涯一人と決めた、愛する女性を失った悲しみは計り知れない。
今は幸せだと聞いているけど、それでも、僕なんかがそこに触れていいはずがない。
「や、その、僕と瀬山さんではレベルが違うから……はは、おんなじではないですよ。あの……僕、先代に言われてたんです。霊力、体力、その両方を鍛えようねって。それでいつか瀬山さんに会わせてあげるから、いろいろ教えてもらおうって。……僕、瀬山さんにお会い出来て嬉しいです。たくさんお話聞かせていただけたらなって思います。
……瀬山さんはいつ現世にいらしたんですか? 先代が口寄せしたんですよね? ……あ、そういえば先代は? 一緒じゃなかったんですか?」
死者である瀬山さんは一人で現れた。
黄泉の国から現世には、きっと先代が口寄せしたはずなのに。
その先代はどこにいるんだろう?
大福も一緒にいるんだろうな。
『うん、現世には昨日の夜、平ちゃんが口寄せしてくれた。大ちゃんと一緒にね。現世に来たのは頼まれたの。岡村さんに、私の知っている事を教えてあげてほしいって。修業は、私じゃなくとも平ちゃんがいれば十分なんだけど……キミは私と同じ”希少の子”。私にしか伝えられない事もあるだろうと思ってね。それに……平ちゃんの会社を視てみたかった。島根でずっと一緒だった、あのきかん坊が大人になって、立派な社長さんになったんだもの』
ふふふ、
瀬山さんは何かを思い出したのか、おかしそうに笑った。
てか、あれ?
今、面白そうなコト言ってたよねぇ。
「んと……”きかん坊”って、先代のコトですか?」
『うん、そうだよ。平ちゃんのコト。あの子は、もう、なんて言うか……ふふふふふ、』
やだ、ちょっと。
視た目は20才、だけど享年70才の瀬山さんは再び、意味ありげに笑い出したのだ。
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