第二十章 霊媒師 瀬山 彰司

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き、気になるっ! あの先代が”きかん坊”? 確かに……大人しいタイプではない。 好奇心旺盛で、若者文化に眉をひそめるコトもなく、積極的に絡んでくるの(よく意味を間違えてて社長に突っ込まれてるけど)。 本人曰く”モーレツな仕事人間” ゆえなのか、暇さえあれば街に出て、霊力(ちから)を持っていそうな生者を物色してる。 人の恋路も大好きで、 ____ああん、もうっ!  ____若いっていいねぇ!  ____恋っていいねぇ! このセリフを何度聞いたかわからない……って、あはは。 思い出しちゃった。 社長とユリちゃんが付き合う事になったと聞いた時もスゴかったよなぁ。 ____おめでとう! 結婚するんでしょ? ____清水君は貯金おろして指輪買ってきなさい! 付き合うと決めた当日だよ?(ま、本当に結婚する事になったけど) もうね、斬り込むにも程がある。 あんな無邪気爆弾、先代だから許されるのよね。 先代はいつだって優しい。 あの日だって嬉しそうに笑ってさ、二人の幸せを自分の事のように喜んだんだ。 穏やかで、人の失敗を責めたりしなくて、そのかわり、どんな小さくても良い所を見つけては褒めてくれる。 気分にムラがなく誰にでも公平。 どうしたらあんな風になれるだろうって、いつも思うよ。 僕は未熟で、時に腹を立て、時に傲り、時に間違う。 大好きな先代は僕の目標だ。 …… …………なのにさ、 その先代が”きかん坊”? きかん坊のイメージとしては……社長でしょ、キレた時のジャッキーさんでしょ、弥生さんでしょ、水渦(みうず)さんでしょ……ってほぼほぼだな、オイ。 あの人達と同系列とか、どうにもこうにも信じがたい。 「あの……」 真相が知りたくて、瀬山さんに声を掛けた。 「あの……僕は昔の先代を知りません。今の先代は優しくて穏やかな人格者で、”きかん坊”と言われてもピンとこないんです」 『そうなんだ……平ちゃん、大人になったんだなぁ』 瀬山さんは目を細め、それはそれはしみじみと、どこか嬉しそうにそう言った……けど、答えになっているようでなっていない。 なもんで、今僕が知っている先代は優しくて穏やかで……と、普段抱くイメージをそのまま伝えたんだ。 すると、 『そう……優しいところは昔とちっとも変ってないんだね。穏やかなところは……ん、穏やかな時もあった、かな』 「えっと聞き捨てなりません。それなら穏やかでない時は、どんなんだったんですか?」 『そりゃあ……ふふふ、荒くて激しかったよ』 「えぇっ!? 先代が!?」 『うん。私は口下手だし……色々な事情があって、一族からも、同胞の霊媒師からも煙たがられていたんだ。誰もかれも、私の霊力(ちから)は利用するのに、私自身と繋がりを持とうとしてくれる人はいなかった、』 あ……心中事件を起こした後の事を言ってるんだ。
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