第二十章 霊媒師 瀬山 彰司

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『……平ちゃんだけだった、私に話しかけてくれたのは。皆はそれに驚いて、中には「奴と関りを持てば立場が悪くなるぞ」と忠告する者もいた。正直……私もその通りだと思ったよ。一族の(おさ)には憎まれる程嫌われていたんだ。話をしている所を見られでもしたら叱責を受け、下手をすれば”瀬山”から追い出されてしまう』 酷い話だな……先代からある程度は聞いていたけど、そんなのまるでイジメじゃないか。 誰が誰と話そうが本来自由なはずなのに。 『ねぇ、岡村さん。私と関わらない方が良いと忠告された平ちゃんは、一体なんて答えたと思う?』 「え……なんだろう。先代が言いそうなコト……そうですね、きっとプリプリしながら『私が誰と話そうと勝手でしょ(ぷい!)』でしょうか? けっこう言いたい事をはっきり言うタイプですからねぇ」 『んー惜しい、七割正解。……ごめん、この問題は少々難しかったかもしれないね。岡村さんは今の平ちゃんしか知らないんだもの。残り三割の答え。ヒント、あった方がいい? それとももう答えを言おうか?』 ん? んー? 問題? ヒント?  もしかして……僕は今、瀬山さんにクイズを出されているのかな? えっと……な、なんだろう、この激しい既視感。 話の途中でクイズを出すのって、先代もよくやるよねぇ。 それって瀬山さんもなの?(てか、イメージ……!)  と、とりあえず、伝説の霊媒師はクイズが好きかも疑惑が出たところで、それならこう答えるのがベストじゃないか? な、返事をしたんだ。 「七割しか合ってなかったのか……くやしいなぁ。でも残りの三割は考えてもわからないと思います。答え、教えていただけないですか?」 先代ならこのセリフでイチコロだ。 僕がクイズに答えられないほど喜ぶ人だからな。 てか、まぁ、わからないのは本当なんだけど。 『そ、そう? 少し難しかった? ごめんね、イジワルしたんじゃないんだよ。七割の正解でも大したものだと思います(ふふふ……)』 あら……やだ、瀬山さん。 困った顔をしてるけど、その反面なんだかちょっと嬉しそう。 どっちがどっちの影響を受けたのかはわからないけど、瀬山さんと先代って似てるのかもしれないな。 とりあえず、立ち話もなんですからと、会社の庭のウッドテーブルへと移動した。 そこで二人は向かいで座り、落ち着いたところで先代がなんて答えたのかを聞いたんだ。 『平ちゃんはね、』 関りを持てば立場が悪くなる? そんなの知るかよ。 ”瀬山”なんて俺にとって踏み台だ。 ここで霊力(ちから)をつけたらコッチから捨ててやる。 俺はな、いつか社長になるんだよ。 誰かに使われるなんて性に合わない、俺が誰かを使うんだ。 その為にはこの人の技術がほしい。 なりふりなんか構ってられるか。 俺より霊力(ちから)があるのはこの人だけだ。 話す価値がある、欲しい霊力(ちから)を持っている。 誰になんと思われようと、俺は俺の好きにする。 ああ、そうだ。 おまえ、もう俺に話しかけるな。 おまえは持っていないだろう? 俺が欲する強い霊力(ちから)を。 時間を無駄にしたくない____ 『こう……言っちゃったんだ』 ふふふ、と思い出し笑いをする瀬山さん。 僕はと言えば……今の先代とあまりに違った発言に、開いた口がリアルに閉まらずにいた。 てか若い頃の先代、一人称が【俺】なんだ……えぇ!? クイズの答え。 残り三割の難易度の高さと言ったらない。 本気で考えても絶対あたらなかったわ。
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