第二十章 霊媒師 瀬山 彰司

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「えっ!? えっ!? 瀬山さん、今、あの方視て”平ちゃん”って言いましたよね? ”平ちゃん”って、先代のコトですよね? いや、ちょっと待って、だって、年が、」 レキナくらいにあばばばばな僕は、食う勢いで瀬山さんに質問するも、天からの声はそれをヨシとしなかった。 『ショウちゃんもっ! 岡村くんもっ! 私が行くまで何もしゃべっちゃダメーッ!』 屋上に立つ先代(?)は、両手を上げてブンブンと振りながら、僕と瀬山さんにおしゃべり禁止令を出したんだ。 先代……なの? あの視た目、どう視たって十代だ。 え、ちょ、どういうコトなの? おそらく先代なその人は、 『今っ! すぐっ! ソッチに行くからっ! トウッ!』 屋上から、若手芸人バリの大声を上げたのと同時、って! なんですとーーーーーっ! あろうことは先代(?)は、迷う事なく屋上から飛んだのだ! 「だめぇーーーーーっ!!」 心臓が縮み上がる! あの高さから飛び降りたら……ッ!(死者だからこれ以上は死なないけど、やっぱり心配!) 僕は滝の冷や汗をかきながら、超特急で電気を溜め始めた。 もちろんそれは、飛び降りた先代(?)が負うかもしれないケガを治す為、癒しの言霊の準備だったんだけど、その先代(?)は、大福顔負けの身軽さで、シュタッと華麗に着地したのだ。 地に降り立った先代(?)は、秒の速さで僕らの元にやってきて、 『もうっ! 私の若い頃の話は内緒っ!』 ぷんぷんしながら、軽く地団駄を踏みながら、握った拳を胸の前に置きながら、言ったんだ。 あぁ……うん、このカワイイ仕草は先代で間違いない。 違いないんだけどさ、僕は目の前の先代(?)をまじまじと視た。 髪は短髪(オシャレ角刈り…的な)、墨のような黒髪は艶々で、白髪なんて一本も見当たらない。 切れ長の目はシュッとして、鋭さの中に幼さが入り混じる。 通った鼻筋、薄目の唇、細い顎。 イケメンと言ってなんの問題もないだろう。 背は……背は謎が多すぎる。 お爺ちゃんの容姿の時は、推定155センチ前後と思われるのに、今の姿の先代は、少なくとも15センチは背が伸びている。 そう、僕より少し低いくらいで、たぶん瀬山さんと同じくらいだ。 細身の霊体(からだ)は若さに溢れ、無駄な脂肪が一切ない。 その霊体(からだ)を包む服は、これまた瀬山さんとお揃いの白いシャツにグレーのパンツ。 ん……?  よくよく視れば、胸に刺繍がしてあるぞ。 白地に白い糸だから気付かなかったけど、これは……星かな? 三角形が上下に二つ重なった、六芒星が描かれている。 少々オーバーサイズなのは動きやすさを考えての事だろうか? おそらく、”瀬山”の霊媒師が着る制服なのだろうと推測。
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