第二十章 霊媒師 瀬山 彰司

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◆ クイズが長かった……って、先代はいつだって長いけど、今回ここに瀬山さんが加わったもんだから、答えを教えてもらうまでにだいぶ時間がかかったんだ。 見た目は若者、中身はお爺ちゃんコンビは(二人あわせて158才)『惜しい7割正解』『ヒントいる?』『ちょっと難しいかなぁ(チラチラ)』とかとか、あーでもないこーでもないと、ヘンな盛り上がりを見せたのだ。 で、やっと教えてもらえた答えはというと。 まず瀬山さん。 約10年前に亡くなった瀬山さんは、先に亡くなり、現世で待っていてくれた最愛の女性と一緒に黄泉の国へと旅立った。 黄泉の国でようやく結婚出来た二人だったのだが……瀬山さん、享年70才なのに対し、奥様は享年22才。 年の差夫婦は珍しくないとはいえ、あまりにも離れすぎている。 そこで瀬山さんは、奥様の年に合わせて霊体(からだ)全体を再構築。 奥様は瀬山さんより二つ年上、なので20才当時を完全再現したというのだ。 なるほど納得。 前にジャッキーさんも言っていた。 黄泉の国では亡くなった時の姿でなくても、好きな年齢に霊体(からだ)の再構築が可能だと。 だから大抵、どの星の死者達も若い姿なのだとも。 それなら先代は? 先代の活動拠点は現世だ。 本人曰く、 ____仕事が好きで、まだまだし足りないの、 ____だから成仏しないで会社に憑りついているんだ、 だったよね。 黄泉の国にいる訳でなし。 社長をはじめ、みんなお爺ちゃんの先代に慣れている。 だからだろうけど、今まで若い姿に再構築した事はなかったはずだ。 なのにどうして今回若者? その答えが…… 『だって、せっかくショウちゃんと現世で会うんだもの。嬉しいじゃない、昔を思い出すじゃない。”瀬山”にいた頃、現場は大抵、私とショウちゃんのツーマンセル。私達に祓えない霊はいなかった。どこの現場も最短時間で終わらせて、帰りは二人でお蕎麦を食べたんだ。楽しかった……当時の思い出は私の宝物。だから今回はね、ちょっと無理して若返ったの』 ふふふ、と恥ずかしそうに笑った先代は、それはそれは嬉しそうに瀬山さんを視た。 そうか……そういう事だったのね。 先代にとっての瀬山さんは、僕にとっての先代とおんなじだ。 この先、何十年と時が過ぎ、今こうして先代と笑い合う日々が思い出に変わったら。 何十年かの未来に、また現世で会う機会があるのなら。 僕もきっと先代と同じ事をするだろう。 そんな事を考えながらしみじみとしていると、足元に何かが絡みついてきたのだが、それは氷のように冷たくて、綿毛のようにフワフワな……大福だっ! 『うなぁん』 下を視れば、丸いお顔が僕を視上げて、ゆっくりゆっくり瞬きしてる(猫のゆっくりまばたきは”オマエ……好き!”の意味)。 「大福ーーーっ! マイスィートエンジェルゥッ! ずっと離れ離れで、僕、淋しくてどうにかなりそうだったよー!」 『うななー!』 たかが一晩と言うなかれ。 僕にとっての一晩は十年の別れと言って過言ではない。 とりあえず抱っこして、頭頂部の匂いを思う存分嗅ぐのだ。 あぁ……良い匂い。(猫ってお日様の匂いがするのよね)
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