第二十章 霊媒師 瀬山 彰司

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『猫又は最終的に九尾まで増えますからねぇ。全部揃ったらどうなっちゃうんだろう? いやぁ、楽しみ楽しみ』 ホクホクのクールイケメンは、『ほっほっほっ』なんて、顔とすこぶるアンマッチに笑う。 「いやぁ……びっくりした。大福、どんどんスゴイ猫又になるな。僕も頑張らないと……うん。先代、瀬山さん、ぜひ僕を鍛えてください!」 僕なんかより、猫又の大福の方がスゴイのは分かってる。 でもね、もしもこの先、大福になにかがあったら僕が守ってあげたいの。 その為には強くならなくちゃ。 霊力(ちから)も、それから……自信はないけど体術も。 『岡村くん、よく言ってくれました。私達は最初からそのつもりだよ。ね? ショウちゃん』 先代は僕を視てニコっと笑い、瀬山さんを視てニヤリと笑った。 『うん、岡村英海(ひでみ)、私と同じ”希少の子”。希少の子はね、霊力(ちから)の使い方が他の霊力者と少し違うんだ。私がそれを教えてあげる』 優しく笑った瀬山さんは、”タン”と地面を足で鳴らした____その刹那。 ゴオォッッ!! 突如大地から。 熱を持った強い風が天に向かって吹き上がる。 「ッ……!」 飛ばされそうな強風に、必死に踏ん張り大福を抱きしめた。 目もまともに開けられず、ぎゅっと閉じ、暗転した視界の中、先代の声が僕の耳に滑り込んできた。 『修業はW県の山中(さんちゅう)。そこは生者にも死者にも害を成す、凶悪な悪霊達がウジャウジャいるの。ぜんぶ祓うまでは帰れない。何日かかるかわからない。だけどね、霊力(ちから)を付けるにはこれが一番手っ取り早い。我々昭和初期生まれの人間は、無理してナンボの根性論者。若い子には申し訳ないけど、今回年寄りのやり方に合わせてちょうだい。 さぁ、岡村くん、大福ちゃん、それからショウちゃん! 出かけようか!』 先代の大声に「はいっ!」と、負けじと大声で返す。 ____無理してナンボの根性論者、 手練れすぎるこの二人についていけるだろうか? 心配半分、期待半分……それでも。 僕はゆっくりと目を開けた。 その時、風はおさまりをみせはじめていた。
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