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____さぁ、岡村くん、大福ちゃん、それからショウちゃん!
____出かけようか!
先代の気合に、身の引き締まる思いがした。
で、みんな揃ってW県に向かって走り出……せたら良かったんだけど、そんなカッコよくはいかなかった。
『じゃ、岡村くん。私とショウちゃんは一足先に行ってるね。向こうで待ってるっ! あ、安心してちょうだい、悪霊には手を付けないでとっておくからっ! あとでねー!』
そう言った先代は、瀬山さんと一緒に煙のように消えてしまった。
あーっ!
それって幽霊の皆さんがよくお使いになる、瞬間移動的なアレでしょ!
生者には絶対に出来ないヤツ!
んもー!
僕、みんなで一緒に行きたかったのにー!
てか場所……!
先代からは”W県の山中”としか聞いていない。
W県内に一体いくつの山があると思ってるの。
こんな手掛かりじゃあ、場所がどこだかわからないよ。
あぁ……先代ってあわてん坊だなぁ。
いくら瀬山さんと会えて嬉しいからって、肝心な事を言い忘れてるんだから。
どうしよ……ん……社長ならなにか知ってるかな?
いろんな意味で、高鳴る胸を押さえつつ、僕は事務室へと歩き出したのだ。
時刻は9時37分。
アウチ……こんなに時間が経っていたとは。
僕は今日、いつも通りに出勤したものの、瀬山さんにお会いし、若者と化した先代と会い、なんのかんのと盛り上がったがゆえ……まだ事務所に行っていないのだ。
これって遅刻になるのだろうか……?
一応会社の敷地までは来ていたし、遊んでいたのではない。
で、でも、そんなの社長は知らないだろうし。
ちゃんと訳を話すしかないな。
それと、先代が言っていた”W県の山中”に心当たりがないかを聞かなくちゃ。
「ぉはょぅござぃまぁす……」
遅刻じゃないけど、遅刻のような気分になって、事務室に入る声がか細くなってしまう。
基本僕は気が小さいのだ。
怒られたらどうしようなんて心配をしていたのだが、どうやら取り越し苦労だったみたいで……
「おぅ、おはよう。どうしたエイミー。なに小さくなってんだ?」
天井に取り付けた鉄パイプにぶら下がり、丸太の腕で懸垂をする社長は、遅れた僕を責める様子はまるでない。
てか……この人なにしてるの?
懸垂……筋トレ?
もうコレ仕事の片手間じゃないよね?
本気だよね?
そんな社長のすぐ近く。
デスクに座るユリちゃんは、「カッコイイ……」と呟きながら頬を染め、手に持つスマホを社長に向けている。
んと……何してるんだ? って、ああ、わかった。
ありゃ旦那の懸垂動画を撮っているんだ。
こんなん毎日見てるだろうに。
ちょ、自由、この二人自由すぎるよ。
僕の遅刻(チガウけど)なんて、気にもとめてないみたいで……良かったっ!
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