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時刻は16時を過ぎた頃、僕はW県のN空港にいた。
会社のあるT駅から羽田空港まで電車で1時間半。
空港に着いてから待ち時間とフライトを含めて3時間半。
合計5時間。
遠路はるばるとはこの事だ。
朝は普通に出勤し、まさかその足でW県に来ようとは。
すべては修行の為。
そう、研修じゃあない、”無理してナンボ”の修行なのだ。
時間は無制限、いつ帰れるかはわからない。
てかその前に、先代達が待つ”山中がどこなのかを霊視しなくてはならない。
自分で探して合流して、そこで初めて修行が始まる。
だがこの霊視が難しい。
だけど頑張るよ。
なんとしても先代達の居場所を探る。
それでガッツリ鍛えてもらうんだ。
わかっている情報は、W県である事と、県内の山のどこかにいる……という事だけで、他は無い。
少なすぎる情報にため息が出てしまう。
だが弱音を吐いていられない僕は、とりあえずスマホを取り出しグー〇ル先生のページを開いた。
困った時はとりあえず検索だ。
なんでもいいからヒントがほしい。
検索ワードは3つ。
【W県】【山】【数】
するとヒットしたのは”W県登山ナビ”。
スルスルとスクロールで詳細を見てみると、県内にはなんと67か所もの山があった。
や、ちょ、思った以上に多いんですけど。
この中から居場所を特定するの?
マズイな……正直、不安しかない。
なんたって、いつぞやの”失せ物探し”の研修の時だって上手くいかなかった。
探す範囲は会社建物内限定だったにも関わらず、結局失敗に終わったのだ。
たかだか3階建てのビルでさえお手上げだったのに、今回範囲は何十倍、何百倍、いや、もっとか?
はぁ……やっぱり無理じゃないだろうか……って、もう!
こんな弱気でどうする!
”なんとしても探し出す”、僕は社長の前でこう宣言したんだ。
あんなにカッコつけといて、やっぱり無理だったぴょーんとは言いたくない。
なもんで。
僕はスマホをタップした。
グー〇ル先生は一旦横に置いといて、アドレス帳を呼び出す。
そして再びタップで電話を掛けたのだ。
プルルル……
1回、2回、3回目でその人は出てくれた。
____ハロー?
あ、うん、電話の出方もいつも通りでブレがない。
低くて渋くて通る声。
甘い低音が耳に響いて心地良い。
「もしもし? 岡村です。キーマンさんですか? いきなり電話してすみません。実は教えてほしい事がありまして。今、話しても大丈夫ですか?」
失せ物に失踪人。
モノだろうがヒトだろうが、成功率100%で探し出す、探知の達人。
先代達を探し出すヒント。
教えを乞うならこの人しかいない。
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