第二十章 霊媒師 瀬山 彰司

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◆ 時刻は16時を過ぎた頃、僕はW県のN空港にいた。 会社のあるT駅から羽田空港まで電車で1時間半。 空港に着いてから待ち時間とフライトを含めて3時間半。 合計5時間。 遠路はるばるとはこの事だ。 朝は普通に出勤し、まさかその足でW県に来ようとは。 すべては修行の為。 そう、研修じゃあない、”無理してナンボ”の修行なのだ。 時間は無制限、いつ帰れるかはわからない。 てかその前に、先代達が待つ”山中(さんちゅう)がどこなのかを霊視しなくてはならない。 自分で探して合流して、そこで初めて修行が始まる。 だがこの霊視が難しい。 だけど頑張るよ。 なんとしても先代達の居場所を探る。 それでガッツリ鍛えてもらうんだ。 わかっている情報は、W県である事と、県内の山のどこかにいる……という事だけで、他は無い。 少なすぎる情報にため息が出てしまう。 だが弱音を吐いていられない僕は、とりあえずスマホを取り出しグー〇ル先生のページを開いた。 困った時はとりあえず検索だ。 なんでもいいからヒントがほしい。 検索ワードは3つ。 【W県】【山】【数】 するとヒットしたのは”W県登山ナビ”。 スルスルとスクロールで詳細を見てみると、県内にはなんと67か所もの山があった。 や、ちょ、思った以上に多いんですけど。 この中から居場所を特定するの? マズイな……正直、不安しかない。 なんたって、いつぞやの”失せ物探し”の研修の時だって上手くいかなかった。 探す範囲は会社建物内限定だったにも関わらず、結局失敗に終わったのだ。 たかだか3階建てのビルでさえお手上げだったのに、今回範囲は何十倍、何百倍、いや、もっとか? はぁ……やっぱり無理じゃないだろうか……って、もう!  こんな弱気でどうする! ”なんとしても探し出す”、僕は社長の前でこう宣言したんだ。 あんなにカッコつけといて、やっぱり無理だったぴょーんとは言いたくない。 なもんで。 僕はスマホをタップした。 グー〇ル先生は一旦横に置いといて、アドレス帳を呼び出す。 そして再びタップで電話を掛けたのだ。 プルルル…… 1回、2回、3回目でその人は出てくれた。 ____ハロー? あ、うん、電話の出方もいつも通りでブレがない。 低くて渋くて通る声。 甘い低音が耳に響いて心地良い。 「もしもし? 岡村です。キーマンさんですか? いきなり電話してすみません。実は教えてほしい事がありまして。今、話しても大丈夫ですか?」 失せ物に失踪人。 モノだろうがヒトだろうが、成功率100(パー)で探し出す、探知の達人。 先代達を探し出すヒント。 教えを乞うならこの人しかいない。
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