第二十章 霊媒師 瀬山 彰司

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大福の誘導で10分程歩いて行くと、そこは寂れた公園だった。 敷地はそう広くない。 遊具は古く、ブランコには【使用禁止】の張り紙は貼られている。 こんな所に公園なんかあったって、誰も利用しないんじゃないかな? だけど好都合だ。 夕方の時間帯、今から公園に遊びに来ようとする人はいないだろう。 周りに何もないのもあってか、通行人すらいない。 たまに車が行きかうくらいで、誰かに見られる心配はなさそうだ。 「大福、ありがと。よくこんなトコ見つけてくれたね」 お手柄の猫又の顎をくすぐる、すると目を瞑りゴロゴロと喉を鳴らしてくれた。 よし、さっそく霊視にチャレンジだ。 というコトで、僕はまたスマホを取り出し地図アプリを起動する。 現在地であるこの公園を中心に縮尺を変えながら、どの方向に山があるのか洗い出す。 ____決めたエクステント(範囲)を小刻みに探るんだ、 キーマンさんの言葉を思い出し、まずは画面上で範囲を区切る。 正確じゃなくていい、ざっくり方角が分かればいい。 本当に小刻みに、僕は範囲を10のブロックに分けた。 それらを順番に霊視して先代達を探す……どーかうまくいきますように。 だが。 キーマンさんから教えてもらったのは、あくまでも”コツ”だ。 霊媒師と一口に言っても、持ってる霊力(ちから)はそれぞれ違う。 霊が視えないキーマンさん、霊体に陽炎のような揺らめきが視える社長や水渦(みうず)さん、すべての霊は白黒に視える弥生さん、頭上に珠が浮かんでいるか否かで霊を視分けるジャッキーさん、そして、生者と死者の区別のつかない僕。 視え方だけでもこんなにも違うのだ。 キーマンさんは探知の霊力(ちから)を発動させると、甘いスィーツの匂いが漂ってくるという。 同じ探知でも社長はゴハン系、前に聞いたのは探してる最中、回鍋肉の匂いがしたと言っていた。★ 霊力(ちから)は十人十色。 キーマンさんはこう探す、というのを教えてもらっても、その方法で僕が探知出来るかと言ったら分からないのだ。 いろいろ試すしかないのだが、まずは水渦(みうず)さんから教えてもらった霊視(のぞき)の印を結び、手探りだけど各ブロックを潰していこうと思う。 両手両五指、それを霊視の印で構えをとった……が、……うん、そうだな、その前に、別の印を結ぼうと思い直した。 構えた印を一旦ほどき、新たに構えたのは”増幅の印”。 あんまり先代達を待たせる訳にはいかないだろう? だったら最初から、霊力(ちから)全開でいこうかなって。 これを組んで発動させれば、しばらく僕の霊力(ちから)は通常の三倍だ。 増幅させてから霊視の印を組む。 この印を結ぶのは練習以外で初めてだ。 僕の探知は一体どんなふうに発動するんだろう? ★社長が探し物をしてる時、回鍋肉に匂いがすると言ったシーンがココです。 https://estar.jp/novels/24474083/viewer?page=369&preview=1
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