第二十章 霊媒師 瀬山 彰司

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____ちょ、エイミーさん落ち着いて。ダイジョブ、ダイジョブだから、自分の話を最後まで聞いてちょうだい。 「最後まで? …………話には続きがあるんですか?」 ____あるよ。 「でも、でもさ、続きがあっても僕の鎖、半径200メートルが限界だもの。W県……山が67か所もあるって。そこを一か所ずつ潰しに行ったとして、山全体を一気に探すとか出来ないし。山を登りながら場所変えつつ、何度も何度も放電しないとわからない。そんな悠長なコトしてたら先代達、待ちくたびれて『修行は中止!』って帰っちゃうかも。それにさ、放電すればするほど、その辺の幽霊捕まえちゃう、」 ____あははは、そうねぇ。山を調べるたびに、知らない霊を捕まえるんじゃあ、先代に会える頃には大所帯のエライコトになりそうだ。ま、それもまた面白そうだけど……って冗談。ごめんね、エイミーさんは真剣なのに。 「ううん、僕こそ文句ばっかり言ってごめんなさい。せっかく教えてくれてるのに」 ____何言ってるの、”文句”じゃないさ。エイミーさんのは”疑問”だろ? 遠慮はいらない、どんどん疑問をぶつけてくれ。で、エイミーさんの疑問だけど。赤い鎖の可動範囲は半径200メートル、それだと67か所もある山々を探すのは難しいってコトだよね。まずこれに対しての回答だ。放電とは言ったが赤い鎖は使わない。そもそもあの術の発動中は、エイミーさんが動けなくなってしまう。アレを使うならツーマンセル以上の時でないとダメだ。放電は鎖の時ほど大量じゃなくていい。少ない量で構わないから、そのかわり長く放電してほしいんだ。そう、水道の蛇口を絞って、水を細く長く出し続けるみたいにね。 「細く長くですか……で、でも、大丈夫かな。細くだとしても、長く放電し続けたら、絶対そこらの霊を拾っちゃう。それはどうしたらいいんですかね?」 ____それも大丈夫。霊力(ちから)を宙に放たなければいいんだよ。そうすれば彷徨う野良幽霊を拾わずに済む。 「……? じゃあどこに放つの?」 ____電柱だよ。 「……はい? 電柱って、外にいっぱい建ってるアレ?」 ____そう、そこら辺にいっぱいあるあの電柱。正確に言えば電柱からケーブルに霊力(ちから)を流すんだ。設備をね、ちょっとだけお借りするの。エイミーさんはまず山の近くまで行く。そこから山に続いている電柱を起点に放電する。アレなら電気を運ぶのに持ってこいの設備だろ? 流した霊力(ちから)はケーブルを伝って山を登り始める。エイミーさんは途中で霊力(ちから)が途切れないように、起点から霊力(ちから)を流し続ける、細く長く継続的にね。……そう、これは会社を守る(つた)の結界に似てるかな。アレも決まった起点から霊力(ちから)を流して、(つた)全体に霊力(ちから)を流すでしょ。エイミーさんは(つた)霊力(ちから)を流したコトはない? 「や、それがないんですよ。社長にそのうち出来るようになってくれって言われてたんだけど、最近はユリちゃんがそれを覚えてくれたから、社長も言わなくなったんです」
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