第二十章 霊媒師 瀬山 彰司

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____大丈夫、わからなくて当然だ。ちゃんと説明するからね。霊力と霊力。これは強い弱いの差はあれど互いに引き合い、くっつこうとするんだ。エイミーさんは死者と生者の見分けをする時、対象者に放電してるって言ってたよね? 「そうです、そうです。放った霊力(ちから)で僕と繋がればその人は死者。静電気みたいにバチッと消えてなくなれば生者です」 ____死者の霊体(からだ)は電気の集合体。だからエイミーさんが霊力(ちから)を放てば、電気同士が引き合い繋がり直結状態になる。さっき自分は、”強い弱いはあれど互いに引き合う” と言ったけど、霊力(ちから)同士が特別強く引き合う組み合わせというのがあるんだ。それが、同一人物の(・・・・・)霊力(ちから)霊力(ちから)なんだよ。 「……それって、僕の霊力(ちから)は、同じく僕の霊力(ちから)に強く引っ張られるってコト? コト?」 ____そうだよ。あのね、前に弥生からマザースターの話を聞いた事があるだろう? 電気を主成分とした巨大な星。黄泉の国の住人の霊体(からだ)も、花も木も、食べ物も飲み物も……すべてはマザースターの電気によって造られている。もしも、黄泉の国の死者がマザースターの地に立ったら、同じ電気同士は強く引き合い、死者は霊力(ちから)の大きな星側に吸収されてしまうんだ。 「吸収か……それってすごく怖いですよね、」 ____うん、怖いよね。だけど安心してちょうだい。どんなに手練れの霊媒師でも、さすがにマザースターと同等の霊力(ちから)はない。よって、引き合っても吸収したりされたりの事故はないから。まぁ、だとしても同じ霊力(ちから)同士は引き合うチカラがとても強くて、その範囲は半径200メートルどころの騒ぎじゃないの。それこそ、うんと広範囲。特にエイミーさんの霊力(ちから)なら小さい山一つ分くらい、余裕でカバー出来るんじゃないかな。 「そんなに!? ヤバイ……キモチが盛り上がってきた……!」 ____エイミーさんはケーブルに霊力(ちから)を流す。その山に先代がいれば……今朝までエイミーさんと一緒にいたんだ。キミの霊力(ちから)が先代に付着してるだろうから、霊力(ちから)同士引き合ってくれる。引き合えば、赤い鎖の時と同様、垂らした糸に魚がかかった時のような手ごたえがある。それが分かれば一気に引っ張ってもヨシ、地道に辿り先代の元まで出向いてもヨシ、だ。 「うわ……どうしよ、ドキドキしてきた。これってなんとかなる? なっちゃう?」 ____ああ、なるよ。ただしコレには一つ条件がある。当然っちゃあ当然だけど、先代の霊体(からだ)にエイミーさんの霊力(ちから)たっぷり(・・・・)付着してないとこの方法は使えない。でも大丈夫だろ? W県に行く前、日中はどんな修行をしてた? 戦闘訓練? 失せ物探し? どちらにしても、先代の前で霊力(ちから)を使っただろうから、その時にキミの霊力(ちから)がたっぷり付着してるはずさ。 「………………えっと、今朝は確かに先代と一緒でした。けど、修行はしてません。主におしゃべりしてました。瀬山さんから先代の若い頃の話を聞いたり、先代からその話は内緒なのって怒られたり。あのぉ……おしゃべりだけでも僕の霊力(ちから)、たっぷり付着しますかね……?」 ____おしゃべりしかしてないの……? 修行は……? 放電は……? 「まったく、……です。訳あって先代に癒しの言霊使おうと、電気は溜めたんですが……その必要がなくなって、使わずにポイしたんですよね。……はは……ははははは、」
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