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◆
ピピピ……ピピピ……ピピピ……
うん、朝か……?
まだ眠い……あと五分……五分したら起きる……
ん……やっぱりダメだ……起きなくちゃ、二度寝したらキケンだ、起きるぞ……起き……すぅぅぅぅ
……
…………り
………………ざーり、
……………………ざーりざーりざーり
うぅ……ほっぺがヒリヒリする……あと胸……重……圧迫……幸せ……
「……おはよ、」
朝の光が差し込む部屋で、僕の胸にドドーンと座る大福は、首を伸ばしてこちらを視てる。
時折、ざらざらの舌で僕を舐めるものだから、ほっぺとか鼻とかおでことか、あらゆるトコロがヒリヒリするのだ。
ああ、なんたる幸せ。
毎日、だいたいこんな感じで起こされる。
ラブリーすぎる推定5kgの(いや、6kgか?)豊満ボディを抱き上げながら、僕は布団の上で半身を起こした。
「知らない部屋じゃ眠れないかと思ったのに……すぐに寝ちゃったな」
そう、ここは僕の部屋ではないし、当然昨日の公園でもなければホテルでもない。
部屋の中を見渡せば、そこはとても乱雑だった。
床に積まれた衣服は、畳んであるのか丸めてあるのか判断がつかないし、朝日の眩しい大きな窓は、カーテンがなく四角い枠が剥き出しだ。
所々に染みがつく、元はきっと白い壁には、何枚ものポスターが画鋲で貼られているのだが……そのうちの一枚。
黒の背景に半裸の男が一人。
その人は、鋼の筋肉を惜しむ事なく見せつけていた。
肩が、胸が、腕が、はち切れんばかりに盛り上がり、腹筋は見ているだけで板チョコが食べたくなる割れっぷり。
斜に構えたアングルで、左手には赤いリンゴが乗っている。
鋭い目つき、ツルツルに剃り上げられたスキンヘッド、印象は巨大な岩山。
そう、現役を引退してもいまだ人気の根強い元レスラー、大和さんだ。
ポスターには荒々しい文字で、
____俺は今、限界の向こう側にいる
____おまえも早くここまで来い
と、書かれていた。
「大和さん、カッコいいなぁ」
『うななーん』
僕は屈強すぎる大和さんを眺めながら大きく伸びをした。
昨日のインW県から一夜が明けて、時刻は朝の5時半だ。
ジャッキーさんから、【霊視入門編はまずコレだ!】な、初心者向けの方法を聞いたあと、その勢いで67分の1を探し出すべくどれかの山に向かおうとしたのだが……すっかり暗くなっていた事と、社長からの電話でそれを中止にしたのだ。
____よう、エイミー! どうだ? ジジィには会えたか?
そんなお気楽な質問に「ははは、まだです」と答えると、
____じゃあもう明日からでいいだろ。で、どこか宿は取れたか? 取れてねぇなら、親父の友達がW県にいるんだ。親父が連絡してやるって言ってるけど、そこで世話になるか?
是非ぃっ!
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