第二十章 霊媒師 瀬山 彰司

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とまぁこんな流れで、大和さんのレスラー時代からのご友人、G・Aネクロマンサーさんの(本名、栗原浩二さん)ご自宅兼格闘ジムに泊めて頂いたのだ。 ちなみにG・Aネクロマンサーさんは大和さん同様、何年も前にレスラーは引退され、今は若手の育成に力を入れているとのこと。 当時のリングネームをそのまま通称で使われているそうなのだが、意味は”極悪な魔術師”。 GとAは”極悪”を”極”と”悪”に分解した頭文字、”ネクロマンサー”はデビュー当時、意味は分からないけどカッコイイ! と付けたらしいのだが、後々意味を知って、魔術師って職業違うじゃん……と後悔したんだって。 そんなG・Aネクロマンサーさん、めちゃくちゃ良い人なの。 大和さんが連絡をしてくれた後、すぐに僕に電話をくれて、 「空港近くの公園だって? 今もう車で向かってるから」 と迎えに来てくれ、家にいらした奥様は急に押し掛けたというのに、 「大したものはないけど、魚は新鮮でおいしいの! いっぱい食べて!」 と本気でおいしいお魚を、お刺身、煮付け、マリネ、等々、そりゃあもういっぱいご馳走してくださったのだ(弥生さんの言う通りだった! 旨いー!)。 なんでもジムには若い練習生がたくさんいるから、いつでもなんかしらの下ごしらえがしてあるそうで、「こんなの少ない方よ!」と豪快に笑ってくれた。 そしてあったかいお風呂をいただき、ジムの二階の休憩室に布団を敷いてくれ……今に至るのだ。 人の優しさが身に染みるなぁ。 先代達にはまだ会えないけど、みんなが僕を助けてくれる。 キーマンさんも、弥生さんもジャッキーさんも、社長もユリちゃんも大和さんも、初めてお会いしたG・Aネクロマンサーさんも奥様も。 そして先代に瀬山さん、いつだって傍にいてくれる大福も。 これは決して当たり前の事ではない、奇跡のような特別だ。 本当に感謝しかないよ。 なんてしみじみしていると、一階(した)からG・Aネクロマンサーさんの大きな声が僕を呼んだ。 「岡村くーん! 起きてるぅ? 朝飯出来てるからウチの若いもんが来る前に食っちゃいな! アイツらが一緒だと一瞬でなくなっちまうから! 早く降りておいでー!」 えぇ! 朝ゴハンまでいただけるの?  もうめちゃ嬉しい!  珍しく朝からお腹ペコペコだもん! 「ありがとうございまーす! 今行きますねー!」 僕も負けじと大きな声で返事をし、嬉々として階段を降りていったのだ。
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