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「ありがとうございます。では……すみません! 今回、思い切って甘えさせていただきます! そのかわり……ユリちゃんがどんな女の子かって話ですよね。お任せください、どんだけ可愛くて性格も良い子なのか、この岡村がご説明しましょう」
僕はニヤリと笑って親指を立てた。
「おっ! カミさんはユリちゃんっていうのか! よし! 乗りたまえ、岡村君! 山のふもとまで送ってあげる! で、ユリちゃんの話、聞かせてくんな!」
ワクテカ顔のG・Aネクロマンサーさんに急かされて、僕は助手席におジャマした。
そして、ユリちゃんについて語る前、こっそりとスマホの地図アプリを起動させ、大福の目の前に差し出たんだ。
「大福、最初はどの山に行く?」
小さな声で聞いてみる。
先代達は県内の山のどこか、67分の1にいるのだ。
引きが悪けりゃ延々次々、探す事になる。
だったらクジ運の悪い僕よりも、猫又尻尾、三本目おめでとー! な大福に選んでもらった方が、当たりそうな気がしたんだ。
なんてったって三尾だもの。
根拠はないけど、縁起が良い気がするのよね。
『うなぁ……うななななな……うなっ!』
タシィッ! と画面を爪で指した大福は、得意な顔で僕を視る。
そっか、ハニーの予想はココなんだね。
わかった、ありがとう。
「G・Aネクロマンサーさん、どうぞよろしくお願いします。僕をT山に連れてってください!」
「おうよ!」
優しい元レスラーは力強く答えてくれる。
僕は見送ってくれる奥様に、窓から大きく手を振った。
そして前を見れば、屈強な若者達がジャージ姿で、ジムに向かって走ってくる所だ。
G・Aネクロマンサーさんは軽く手を上げ、ファーーン! と長めにクラクションを鳴らした。
お世話になって良かった。
布団で眠れたって事だけじゃない。
惜しみのない親切と明るさに、心はすっかり癒されてしまったんだ。
この先、誰かが困っていたら、僕も同じように助けようと誓う。
さあ、いよいよ霊視実践だ。
先代達に早く会えるように頑張るぞ!
頑張るけど……ははは、山って67ヶ所もあるのよねぇ。
まったくもって山盛りだな!(山だけに)
その数に気が遠くなりそうだわ。
という事で……どうかひとつ!
あわよくば、一発目でヒットしますようーに!
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