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G・Aネクロマンサーさんの車を見送り、僕は大福とT山のふもとに立っていた。
初めて見るT山は、登山やハイキングで賑わうような山ではない。
公道がrの形に分かれ、逸れた登り坂はそのまま山道になっていた。
それは車も通れる舗装道路で、ただ幅は狭く、両端は所々アスファルトが割れている。
標高はあまり高くなさそうで、車を使って峠を越えれば、迂回せずとも隣町に行けそうだった。
時刻は7時半。
平日の通勤時間帯だというのに、あたりは人もまばらで閑散としている。
ネットで見た地図によれば、ここから駅はだいぶ遠いし、住宅街でないのが僕にとって幸いし、人目を気にせず放電ができそうだ。
まぁね、放電した所で霊力者でなければ視えないけれど、視えないからこそ、ジャージ上下で背中にリュック、大きな袋を両手に持った僕は、下手すりゃ怪しく見えてしまうだろう。
人の少ない今のうちに、ガッツリ霊視(入門編)をしておきたい。
とりあえず。
僕は山へと続く電柱に目をやった。
普段、電柱なんてじっくり見たコトがない。
外に出ればそこいらじゅうにあるんだもん。
あまりに見慣れ、そこにあるのが当然で、特別に注意を払った事がないんだ。
今回改めてじっくりと見ると、高い位置で伸びるケーブルは、一本ではなく複数本あった。
____電柱に放電し、そこからケーブルに霊力を流すんだ、
んー、ジャッキーさんはそう言ってたけど……ケーブル何本もあるよ。
これ、放った電気はどのケーブルに入り込むんだろう?
あ、それとも一本とは限らないのかな?
ケーブルの数だけ霊力は分散され、すべてのケーブルに流れるのかもしれない。
ジャッキーさんはそこまで言ってなかった。
はぁ、初めての事で勝手がまるで分らないや。
でもまぁ……だからこそやってみるしかないか。
僕はジャッキーさんから教えてもらった事を思い出していた。
瀬山さんの風を浴び、僕の身体にはたっぷりの霊力が付着してるはず。
まずはこれを集めて一塊にする必要がある。
そうでないと、霊力は時間が経てば経つほど、その分消失してしまうからだ。
ジャッキーさん曰く、付着した霊力が完全になくなるまでおそらく数日。
先代達を視付けるのに何日かかるかわからない状況で、モタモタしてたらせっかくの霊力が完全に消失してしまう。
そうなれば、霊視スキルのない僕は行き詰ってしまうんだ。
そうならない為には、瀬山さんの霊力をすべて集めて、数日程度で消失しないタフな塊にしなくちゃダメなの。
方法はジャッキーさんから聞いてある。
作業自体は難しくない。
ただ、失敗は絶対に許されない。
しくじれば、瀬山さんの霊力は一瞬で飛散して……消失してしまうからだ。
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