第二十章 霊媒師 瀬山 彰司

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と、ここまで脳内で復習したところで、さっそく作業に取り掛かろうと思う。 「大福、手順は説明した通りだよ。ヘマしないように頑張るけど、もしも僕がしくじったら助けてね」 三尾の猫又は頼りない下僕の願いに『うなっ!』と可愛く返事をしてくれた。 ありがとね、頼りにしてるからね。 では……いつものように。 深く息を吸い、長く吐いた。 気持ちを落ち着かせ、僕は両手を湾曲させて向かい合わせる。 そしてこれからどうしたいのか、心の中で強く念じたんだ。 瀬山さんの貴重な霊力(ちから)、 欠片も無駄にする事なくすべて集めて塊にしたい! 今の僕にはとってもそれが必要なの! 霊力(ちから)よ、僕を助けて(・・・・・)! 手の中に眩い光が生まれる。 大福と同じ雪色で、ほんわりと温かい。 霊力(ちから)が溜まれば溜まるほど、まるで温泉に浸かっているような心地よさに包まれた。 昨日はたっぷり寝たはずなのに、途端眠たくなってくる。 癒しの霊術かぁ……誰かにかけた事はあっても、自分がかかるのは初めてで、あぁぁ……こんなに気持ちの良いものだとは思わなかった。 疲労、腰痛、眼精疲労、それらが薄くなっていく。 僕はぽわんとしながら目を閉じて、しばらくは大人しく、白い霊力(ちから)に包まれながらジッとしていた。 時を待てば、付着の霊力(ちから)は白い霊力(ちから)つなぎ(・・・)にまとまるはずだ。 うん、ここまでは順調だ。 そりゃそうか、霊力(ちから)を溜めて、中に包まれ、大人しくしてるだけだもん。 勝負はこの後。 瀬山さんの霊力(ちから)がちゃんと塊に変わったら、僕を包む白の霊力(ちから)を解除する。 その瞬間、おそらく塊は、勢いよく宙を飛ぶ。 そう、瀬山さんの所に戻ろうとするんだ。 ジャッキーさん曰く、 後を追えるスピードではない、だから逃さず捕まえるんだ。 見失ったら最後、二度と視付けられない。 素早く、優しく、霊力(ちから)じゃなくて手で捕まえて。 乱暴に扱えば、止める事は出来ても飛散するからね。 絶対につかまえる。 閉じた目を開ければ、瀬山さんの霊力(ちから)は、着々と塊への再構築を始めていた。
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