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この時の僕は塊が無いと困るとか、そんな事はすっかり頭から抜け落ち、とにかく吐かせたい気持ちでいっぱいだった。
必死になって喉と背中をさすり続ける、と。
ケポ……ケポケポ……ケポポ……ンゲー、変な音をさせながら、そして霊体全体金色に発光させながら、大福は胃の中の物を吐き出したのだ。
「よ、良かった……! 大福、苦しくない? どこか痛い所ない? すぐに癒しの霊力チャージするからね! 少しだけ待ってね!」
僕は両手を湾曲し、すぐさま霊力を溜めようとした。
だがそれを大福本ニャンが止めた。
『うな、うななな、うなっ!』
「え? 心配いらない? でもって吐いたモノを視ろ? わっ! ナニコレ!」
地面には噛み砕いたはずの塊が落ちていた。
クリーム色と雪色のマーブルに金色が加わって、最初に視た時よりもゴージャス感が増している。
そしてなにより……塊は宙を飛ぶ気配がない。
拾い上げればキラキラと光り、僕の手の中に大人しく収まっていた。
「これ……大福が再構築したの? どこにもいかないように? あんなに噛んでよく飛散しなかったな……もしや大福の口の中で保護されてたとか」
よくわからないけど……最初の塊を噛み砕き飲み込んで、飛散する前に大福の妖力を練り込んでから元の形に戻したってコトかな。
瀬山さんの霊力に引っ張られるより、僕のつなぎと大福の妖力に引っ張られるチカラの方が強くなったのかもしれないぞ。
それで僕達の元にとどまってくれる感じ?
僕がそう聞くと、すこぶる得意な顔をした猫又が『うなっ!』と元気に答えてくれた。
「そっか……大福はすごいな。僕は助けられてばっかりだ。んもー大福大好きっ! ありがとね、めちゃくちゃありがと! これで瀬山さんの霊力は確保できた。よっしゃー! さっそく電柱に放電しようっ! てか道のり長っ!」
僕のテンションは高くなっていた。
大福の第二形態を視る事が出来、瀬山さんの霊力も確保した。
それともう一つ。
塊が宙を飛び、瀬山さんの元へ戻ろうとした方向は二回とも同じだった。
そう、幾度かの旋回ののち、塊は目の前の山に向かっていたのだ。
もしかするともしかするかもしれない。
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