第二十章 霊媒師 瀬山 彰司

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◆ 公道をrに分かれる山道の、入口近くに立つ電柱。 そこから伸びるケーブルは、真っすぐ公道を進むものと、山道を登るものとが分岐になって、二又に分かれていた。 「ケーブルって延々真っ直ぐ伸びてるものだと思ってた。こんな風に分かれるポイントがあるんだな。普段目に入っていたはずなのに……記憶にぜんぜん残ってないや」 なんて。 分岐を見ながら独り言ちる。 そんな新たな発見をしたのと同時、ふと、ケーブルって人生みたいだなと思う。 真っすぐ進んでいたはずなのに、ある日突道が分かれて、どちらに進むか決断しなくちゃならないの。 平凡な僕でさえ幾度かあった分岐点。 それと似た図がまさか電柱にあっただなんて……ぜーんぜん気が付かなかったわ。 まぁもっとも、僕が外を歩く時は下ばかり見てるからね。 昔は道端に猫がいないか探していたし、今は大福とのおしゃべりで忙しい。 余所見をしてる暇はないのだ。 だけど今度からは少しくらい上を見てみようかな。 なにか人生のヒントが見つかるかもしれない(ないか)。 ケーブルに人生の縮図を見た所で、さっそく放電しようと思う……のだが。 起点候補にと考えたこの電柱。 ケーブルの分岐点になっているがゆえ、ココで霊力(ちから)を流したら、山を登らず公道側に伸びたりしない? と不安になった。 大福の活躍でせっかく瀬山さんの霊力(ちから)を確保したのだ。 えぃっと放電したはいいけれど、山を登らず公道走ってました、では申し訳なさすぎる。 かといって今の僕では、分岐の片側だけに霊力(ちから)を流すなんて器用なコトは出来そうにない。 それならどうするか。 そう、起点をずらせばいいんだ。 という事で…… 「大福おいで。一緒に山登りをしよう」 猫姫さまに声を掛けると『うなっ!』と可愛く返事をし、僕の横を弾むようについてくる。 お徳用ビッグサイズから、元の大きさに戻った大福もやっぱり可愛くて、修行なのに、気分はちょっぴりハイキングだ。 それから少しして、スタート地点が見えなくなった。 分岐の柱も寂れた公道もない、代わり、登ってきた坂道が先細りに伸びている。 「このくらい登れば大丈夫かな、」 立ち止まって辺りを見れば、雑な舗装の山道と、その道に沿って建つ高い電柱。 前を見ても後ろを見ても、分岐の箇所はどこにもない。 ココを起点に放電すれば、霊力(ちから)は真っすぐ山を登るはず。 人目もないし、絶好のポイントだ。 僕はポケットから瀬山さんの霊力(ちから)を取り出した。 そして片手にそれを握り、反対側の手を湾曲させる。 霊力(ちから)は弱く、細く、優しくだ。 神経を集中させ、幾瞬かが過ぎていくと、僕の両手は徐々に赤い光を発し始めたのだ。
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