第二十章 霊媒師 瀬山 彰司

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僕の片手に赤の霊力(ちから)が溜まっていく。 それに伴い、もう片手に持つ瀬山さんの塊も温かくなってきた。 僕の霊力(ちから)に反応しているみたいだ。 いいぞ、ここまでは良い調子。 今回、溜めた霊力(ちから)を電柱に流すにあたり、量を抑える必要がある。 だってジャッキーさんが言っていた。 ____うんと大きな霊力(ちから)を一気に流すのでなければ問題ない、 と。 そう聞いて安心したけど、逆に言えば、うっかり加減を間違えるとマズイって事なんだ。 それに気付いた僕は慎重になった。 だってさ、修行のせいで近隣の方々に迷惑をかける訳にはいかないもん。 弱く、細く、優しく、か。 最初はね、うまく出来るか不安があった。 ここ最近、現場はいつも全力全開。 霊力(ちから)を出しまくっていたからね。 それをどう調整したらいいか考えた時、ふと思い出したの。 霊力(ちから)の加減、これ、前にした事があったじゃないって。 そう、あれは4月。 ガチのド新人だった頃だ。 社長に連れられ、東京都H市のアパートにOJTとして行った時、僕は初めてユリちゃんのお母さん……貴子さんに会った。 11年もの長い間、アパートに縛られていた貴子さん。 僕は彼女の為に、霊力(ちから)を使って桜の花を作ったの。 正直形は不揃いだった。 それでも、色だけはうまく出来たと、少しだけ自信を持った。 霊力(ちから)を、いつもの三割減に抑えて、赤い色を薄くして、桜のようなピンク色にしたんだ。★ 思い出せ。 あの時と同じようにすればいい。 溜める霊力(ちから)を意識して弱めれば、赤い光は桜の色に変化する。 それを目安に、霊力(ちから)の色が桜色に変わったら、そのタイミングで電柱に流し込めばいい。 という事で。 霊矢の時とか、鎖の時とか(特にコレね)、オフェンス系の霊術を使う時とは違う、ゆるやかな気持ちに切り替える。 その辺の草花をスンスン嗅いでるプリティ猫又を視れば、それは実に容易い事だった。 てか、必死になってデカイ霊力(ちから)を溜めるより、ぜんぜん楽チンだ。 こんなんでいいのかなってくらい。 あっという間に霊力(ちから)が溜まり(桜色)、起点に決めた電柱に流し込んでみた。 これを弱く、細く、優しく、継続して流し続ければいい。 うまい事この山に先代達がいれば、釣り糸が引くように引っ張られるはずだ。 さあ、ココにいるのか否か。 どっちだ。 ★OJTの初現場で桜の花を構築したシーンがココです。 https://estar.jp/novels/24474083/viewer?page=58&preview=1
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