第二十章 霊媒師 瀬山 彰司

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それからすぐに、湾曲した僕の手に小さなチカラが伝わってきた。 垂らした釣り糸に、小さな魚がかかったような。 強くはないけど、クイクイと僕を引く。 「ヒット……したのかな、」 独り言ち、手から発する光を視つめた。 桜の霊力(ちから)は電柱を包み込み、上に流れてケーブルに消える。 まさかこんなに早く手ごたえがあるなんて。 霊力(ちから)の誤作動でない限り、やはり先代達はこの山のどこかにいるのだ。 良かったよ……正直助かった。 これで残りの66ヶ所を回らずにすむと、僕はホッと安堵した(だって66ヶ所よ? 移動だけでも大変だ)。 しかし大福先生の勘はスゴイな。 この子に選んでもらって正解だ、さすがは三尾。 いつか宝くじを買う時は、猫又さまに選んでもらおう。 きっと強い妖力で、当たりを視付けてくれるだろうから。 ん……? 妖力で視付ける……? それって……要は霊視だよねぇ。 ん? んん? んんん? ……って、あ、やだ、もしかして、いやまさか、だがしかし。 「……大福さん、まさかとは思うけど、この山を選んだのはただの偶然、だよねぇ?」 僕がそう聞くと、足元の猫又は一瞬固まり、不自然なタイミングで毛繕いを始めた。 えぇ? 話の途中なのに今するの? いつもはそんなコトしないよね。 ちょ……挙動、怪しくない? 「ほら大福、コッチを向いて。大事なお話だよ。先代達がどこにいるか、キミはすでに知っていたの? 知ってて知らない振りしたの?」 再び念を押し聞いてみれば、さらに激しく毛繕い。 それが終わると、ちっちゃなお顔を超高速で横に振り、お得な三尾をぶわっとさせた(猫は興奮や緊張で尻尾が膨れry)。 ああ、そういう事かぁ。 もうバレバレですよ。 ウソが下手すぎ、これ、絶対知ってたわ。 知ってたクセに、知らないふりして、僕をココに誘導したんだ。 んもー、ダメじゃん、大福。 呆れ半分、ありがたさ半分……ってウソ。 本当は呆れゼロ、ありがたさが全部だ。 「大福、僕、怒ってないよ。ありがとう。心配してくれたんだよね。僕が大変になりすぎないように」 そうだよ。 居場所を教えるだけが目的なら、わざわざ瀬山さんの霊力(ちから)の再構築なんかさせなくて良かったんだ。 それなのに、ちゃんと挑戦させてくれたじゃないか。 塊が逃げ出した時だって、この子は二回も助けてくれた。 ちょっと僕に甘いかなとは思うけど、手を出しすぎずに(・・・・・・・・)助けようとしてくれたんだ。
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