第二十章 霊媒師 瀬山 彰司

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『ぅなぁ……』 小さな声で一言鳴いて、丸い背中をさらに丸めて、猫又のお姫様は『ごめんねぇ』と言っていた(どうしてわかるかって? それは僕が猫廃人だからだよっ!)。 「あやまるコトなんて何もないよ。ありがとうね。僕、助かっちゃった」 『…………うんな……?』 「もちろん本当だよ。全部の山を探していたら、先代達、待ちくたびれちゃうし、正直僕も大変だ。大福はそれを心配してくれたんだよね。単に場所を教えるんじゃない、ちゃんと霊視の練習をさせてくれたじゃない。この後も練習させてくれるんでしょう? この山に先代達がいるのはわかった。あとは霊力(ちから)を辿って視付け出すだけ。僕、頑張るよ。大福、僕に付き合ってくれる?」 『うなな……うなーっ!』 あはは、ちょっと前までションボリしてた猫又なのに、すっかり元気になっちゃった。 良かった、大福が元気だと僕も元気になってくる。 俄然やる気が湧いてきた。 という事で、先代達がどこにいるのか。 それをこれから絞り込んでいこうと思う。 僕が霊力(ちから)を流した位置は、ふもとから歩いて約10分程度の低い位置。 そこを起点に30分。 上に向かって霊力(ちから)を流し、ついさっき、釣り糸に小魚がかかったような反応があった。 という事はだよ。 先代達がいるのは、起点より上部側。 そんなの当たり前だろ? と思う事なかれ。 ささやかだけども貴重な手掛かりだ。 僕は湾曲の手のひらを握りしめ、ここで一旦霊力(ちから)を止めた。 すると起点の電柱は光を失い、元の灰色の柱に戻る。 ここはもう必要ない、必要なのはココより上だ。 「大福、僕と一緒にもう一回山登りだ。れっつごー」 すっかり元気な猫又に声をかけると、ゴムまりみたいに跳ねてくる。 時折ぼふんとぶつかって、お得な三尾でふっさーと撫ぜてくる。 ああ……可愛いなぁ、一緒にいれて幸せだ。 ちょこちょこ幸せに浸りつつ。 等間隔に建ち並ぶ電柱を、坂を上って1本2本3本4本……5本目で立ち止まる。 ここを新たな起点とし、桜の霊力(ちから)下部に向かって(・・・・・・・)流し込んだ。 同時、頭の中でゆっくりと百を数える。 「97、98、99……100。反応はないな。てことは、最初の“起点A”からここ、“起点B”までの間にはいないって事だ。じゃあ、もう少し進もう。大福ー、行くよー」 『にゃにゃっ!』 とぅっ! と華麗な跳躍で僕の肩に飛び乗った大福は、『進むにゃー!』とでも言っているのだろう。 テンション高めの鼻息が、僕の頬にそよそよとあたる。 ああ……可愛いなぁ、一緒にいれて幸(ry 推定5……いや、6kgの猫又を肩に乗せ、さらに進むは山の道。 舗装されてるとはいえ、坂道はキツイ。 それでも、G・Aネクロマンサーさんからいただいた、ジャージ上下とスニーカーのおかげで動きやすいし足が痛くなったりしない。 助かるなぁと感謝しながら、さらに歩き、”起点C”となる電柱の前に立つ。 一番最初の”起点A”から数えたら10本目の電柱だ。 ここでも同じ作業。 ”起点C”から下部に向かって霊力(ちから)を流すも、反応は無し。 むぅ、てことは”起点B”から”起点C”の間にもいないのね。 …… …………試しに、”起点C”に立ったまま、僕は身体の向きを変えた。 そして、今度は上部に向かって霊力(ちから)を流してみた。 グイッ……グイグイグイ、 わっ、引っ張られた! 明らかに反応を返してくれる。 「やっぱり……もっと上にいるんだな」 気持ちが上がる。 このまま細かく辿っていけば視付かるはずだ。 先代、瀬山さん。 あと少し、もう少し、待っていてくださいね。
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