第二十章 霊媒師 瀬山 彰司

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山の坂道を歩き続けていた。 途中で何度も起点を変え、放電する事複数回。 先代達の居所はまだ知れない。 今わかっているのは、”二人は山の上の方にいる”、という事だけだ。 それでも気持ちは楽だった。 昨日の夕方にW県に着き、休む間もなく霊視にチャレンジ。 だけど視えてこなくって、不安と焦りで心が折れかけたけど…… 先輩方とG・Aネクロマンサーさんご夫妻に救ってもらい、大福にも助けられ、今こうして具体的な手掛かりを辿れている状況は、僕にとってとても明るい。 山道はキツイけど、肉体的疲労はどうにでもなる。 いざとなったら、自分で自分に癒しの言霊を使えばいい。 とまぁ、そうなんだけど、癒してもどうにもならないのが空腹だ。 慣れない山登りと継続的な放電でカロリーを相当消費したらしく、僕のお腹はグーグーと鳴り出した。 時刻は10時を過ぎた頃。 お昼ご飯には早いけど、G・Aネクロマンサーのオウチで朝食をごちそうになったのは早朝5時半。 持たせてもらったお弁当、いただいちゃおうかな。 「大福、ここらでちょっと休憩しよう」 とはいえどこで食べようか。 さっきから1台も車が通らないとはいえ、一応ここは車道だもの。 こんな所でお弁当を広げたら、車が来た時迷惑になっちゃう。 とりあえず背伸びでキョロキョロしてみると、あと数メートル進んだ所に、車が2台ほど停められそうな展望スペースを発見。 よし、あそこでランチタイムだ。 テクテクと歩き、少しだけ広い場所へとやってきた。 転落防止の柵には草の(つる)が絡み会社を思い出す。 うーん、と大きく伸びをしてから、お弁当を取り出した。 中身はおにぎりが3つに、使い捨て容器に入ったおかずがいっぱい。 おいしそうだなぁ! 厚焼き玉子には海苔が一緒に巻いてあり、切った面がグルグルしていて目に楽しい。 お弁当の定番ともいえる鮭は竜田揚げにしてあって、サクッとした食感なのに、中は脂がのっている。 ほうれん草の胡麻和えに、コショウのきいたソーセージ、カリフラワーとベーコンのソテーも最高だ。 「おいしいねぇ」 『うななーん』 僕はお弁当、大福はおやつの”ちゅるー”、一人とイチニャンのランチタイムは幸せいっぱい、お腹もいっぱい……ああ、幸せだ。
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