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おいしいお弁当でお腹を満たし、僕と大福は山道を歩きだす。
並ぶ電柱、5本ごとに放電し、空振りだったらまた進む。
テクテクテクテク。
たくさん歩いて暑くなり、ジャージの上を脱ぎ捨てた……ってウソ。
捨てずに腰に巻きつけた。
中に着ているTシャツは、やはりネクロマンサーさんからいただいたものだけど、そこには凛々しい顔の大和さんがプリントされている。
なんでも”大和グッズ”の新作が出るたびに送ってくれるそうなのだ。
ネクロマンサーさん曰く、
このTシャツは去年モデルで散々着たし、今年の分はもうもらったから。
と僕にさげてくれたのよね。
てか大和さん、レスラー引退して何年よ。
いまだグッズが出るとかスゴイよな。
でもってコレを着てると、強くなった気分になるのは気のせいだろうか?
……って、あはは、絶対気のせいだ。
一人で言って一人で笑った僕は、新たに決めた”起点H”の電柱で、下部に向かって放電をした。
この時……これまでの連続空振りで、緊張感が薄れていたんだと思う。
頂上には近いけど、まだまだ距離はありそうだし、きっとまた空振りだろうと緩んでた……なのに。
グィィッ!!
「うわぁっ!」
身体が強く引っ張られた。
それだけじゃない、湾曲の手のひらはジワジワと痺れ、霊力の塊はジンジンと熱を増した。
なんだコレ……明らかに違う。
ふもとで感じた反応とえらい違いだ。
自分の意志とは関係なく腕は上がり、引きずられ、そのまま柱の上まで連れていかれそうになる。
「マズイな、」
このままでは吊り上げられて、なんらか霊力が途切れたら僕はそこから落下する。
そうなれば大ケガか、最悪死者の仲間入りだ。
いいや、一度ここで霊力を止めよう。
大丈夫、ここまできたんだ。
あとはどうにでもなる。
なんなら大声で呼んだっていい、「二人はどこにいますかー」ってね。
湾曲した手のひらは痺れっぱなしだ。
無数の針で一斉に刺されたようなチクチク感に鳥肌を立てながら、僕はギュッと拳を作り、桜の電気を強引に止めた。
心配した大福が僕の手の甲をペロペロと舐める。
ありがとね、僕は大丈夫だよ。
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