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腕をさすりながら、僕はあたりを見渡した。
山を登る途中まで、舗装の道の片側は落石防止のコンクリ壁が、反対側は崖だった。
坂も急で歩くのがキツかった。
だけど今は?
続くカーブをひたすら登り、頂上近くのこの場所は、コンクリ壁は変わらないけど、反対側は崖じゃない。
緩やかな下りの大地が広がって、降りて行くのは不可能じゃない。
「…………降りてみるか。それで、」
古びたガードレールを乗り越えて、舗装の道から草の大地に足を踏み入れた。
背伸びでキョロキョロ視てみたが、先代と瀬山さんの姿はない。
だが瀬山さんの塊は、眩いくらいに光を発し、本体に強く反応している。
絶対にいる。
試しに僕は大声で二人を呼んだ____が、返事はない。
隠れているのか、聞こえないのか……判断がつかない。
仕方がない、伝説の霊媒師さんには失礼だけど、ココまで来てもらおうかな。
僕はスゥっと息を吸い、両手両五指、これを複雑に絡め合い、増幅の印を結んだ。
これでしばらく、僕の霊力は通常の3倍だ。
下準備はこれでOK、お次は……両手のひらを向かい合わせて湾曲し、加減無しで霊力を溜めた。
増幅の印の効果は絶大で、瞬き五つで赤い塊が出来上がる。
そう、僕は今、赤い鎖を構築してるのだ。
神奈川の現場ではオタク幽霊24人を、マジョリカさんの現場では悪霊百体を、僕の鎖は一人も逃す事なく縛り上げた。
この鎖に瀬山さんの霊力を乗せてやれば、必ず視付ける、必ず絡める、必ずココまで連れてくる。
……
…………
よし、完了。
すべては整った。
僕の手には、構築を終えた赤い鎖が触手のごとく蠢いていて……
スゥゥゥゥ
大きく深く息を吸い込んだ。
腹の底から大声を出すために。
そして、
「瀬山さーーーーーーーーーん!! 大変恐縮では御座いますがぁぁぁぁぁ!! 僕の元までご足労願いますぅぅぅぅぅ!!」
たった一人を捕らえる。
その為だけに、百の単位の赤の鎖は四方八方、宙を飛んだ。
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