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極太鎖が獲物を狙った蛇のごとく宙を飛び、それはやがて、先に繋がる細い鎖と同じ場所に落ちた。
そこは広がる草地の終点で、その先は高さもまばらな木々でうっそうとしている。
あそこにいるのは間違いない、けど先生方はいまだ姿を視せてくれない。
せっかくの修行だ、いろんな事を試したい。
そんな欲に駆られた僕は、まずは現状を整理した。
最初こそ、瀬山さんに霊力負けをしてたけど、極太鎖の投入で今は均等。
お互いに引き合う霊力が相殺された。
立ち止まり、ジッとしたってもう引きずられる事はない。
”対瀬山さん仕様”の極太鎖は、思う以上にパワーがあるのかもしれない。
僕と瀬山さん、
今、二人のチカラが均等なら、
そのバランスを崩してみたい、
崩して、瀬山さんより少しだけ強いチカラで、
僕の元までお越しいただきたい、なんて____
____頭の隅では、
人としても、霊媒師としても、希少の子としても、
すべてにおいて大先輩である瀬山さんに、
僕はなんて失礼でおこがましいんだ、と思う、
なのに気持ちは昂って、
試してみたい衝動を止める事が出来なかった、
ひとつだけ言い訳をすれば、
決して驕っているんじゃない、
僕ごときが、瀬山さんに勝ってるとは思ってない、
ただ……たぶんだけど、
僕は前よりも、
霊媒師の仕事が好きになったのだと思う、
大変だけど、人の役に立つ仕事だもの、
だからおこがましくも挑戦したくなる、
僕は鎖の親玉経由で極太鎖に目一杯の霊力を流した。
引き寄せるチカラを上げる、そしてココまでお越しいただくんだ。
「瀬山さんっ! どうかココにっ!」
ドクンと脈打つ極太鎖を霊力いっぱい手前に引いた。
ゴツイ鎖は意外にも柔軟に、しなりながらも僕の元へ飛び戻る。
予想が正しければ、あの鎖の先端には拘束された瀬山さんがいるはずだ。
24人のオタク幽霊達も、百体以上の悪霊達も、みんなそうして縛り上げた。
無礼はあとであやまろう、ただ今は、そこにいるのか、いないのか、目を視開いて、その答えを待っていた。
……
…………
………………答えはすぐに知れた。
飛び戻った極太鎖。
その先端には確かに、会いたくて会いたくてたまらなかった瀬山さんがいた。
サラサラの黒髪を風になびかせ、優しい目をして、そして嬉しそうに笑っていた。
やった……僕の元に来てくれた。
ここにお越しいただけたんだ。
胸がドキドキする、すごく嬉しいよ。
ただ……現れた瀬山さんの恰好は、予想していたのとは違ったもので……
そう、瀬山さんは、鎖に拘束されてはいなかった。
しなる極太鎖の先端で、優雅に、横向きに、微笑みながら、ラフな感じに座っていたのだ。
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