2367人が本棚に入れています
本棚に追加
数えきれない触手が鎖の中へと侵入する。
表面を突き破り、遠慮も無しに入り込む。
ゾクッ……!
鎖から伝わるなんとも言えない感触に、僕の身体に鳥肌が立つ。
き、気持ち悪い……!
痛みはないけど、尋常じゃない違和感に頭の中がグラグラする。
透けて見える鎖の中は、入り込んだ数多の触手で埋め尽くされている。
それが中でせわしなく動き、感触的にも視覚的にも背中がゾワリと冷たくなった。
浸食される……まさにこんな感覚で、だけども何も出来なくて、僕はただ、白い触手の、互いが互いを絡め合って融合し、形状変化をし続ける……そんな再構築を凝視していた。
鎖の中では僕の霊力と瀬山さんの霊力が激しくせめぎ合っていた。
これは……霊力比べだ。
ああ、違うな、そうじゃない。
元より勝負になってない。
瀬山さんの霊力は圧倒的で、僕は赤子同然だ。
あっという間だった。
赤い光は白い光に内側から呑み消されてしまった。
「瀬山さん……これって……」
今の……なに?
僕の手には、まだちゃんと“鎖の親玉”がある。
でもこれは僕のじゃない。
だって色が、空気が違う。
ここにあるのは白い塊だ。
そして塊から伸びる鎖も赤じゃなく、白なんだ。
乗っ取られた……?
形はそのままに。
真珠の鎖に立つ瀬山さんは、風になびく前髪を鬱陶しそうにしながら、
『岡村さん、少々荒っぽいけど許してね』
そう言って眉を下げた。
そして両手両五指、軽く内側に曲げる。
「……ッ!」
突然の浮遊感。
同時に視界が回転し、瀬山さんの姿が消えたと思った次の瞬間。
僕の視界に曇り空が広がった。
一体……何が起きた……?
立っていたはずなのに、地面の感触は足の裏ではなく、背中一面に感じてる。
一瞬だ、一瞬で体勢が変わった。
なぜ僕は寝てるんだ?
現状が把握できない。
とにかく起きよう、
起きて、何がどうなっているのか確認して……
や、待て、
なんで?
僕、動けないんだけど……!
最初のコメントを投稿しよう!