第二十章 霊媒師 瀬山 彰司

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言われて気付いた。 そうだよ、鎖の親玉はどこへいった? 拘束前、塊は確かに僕の手の中にあった。 アレを離したら、鎖の上の瀬山さんが落ちてしまう。 だから決して落とさぬように、両手にしっかり持っていた。 なのに塊は消えたんだ。 現状を整理しよう。 今僕は網脂に拘束されて、ミノムシみたいにグルグル巻きだ。 肘を曲げ、両手を向かい合わせに、塊を持つポージングのまま固められている。 拘束までは一瞬で、塊を奪われたり落としたりはしていない……はずなのに、手の中に塊の感触はない、空っぽだ。 頭の中は疑問符で埋め尽くされていた。 答えが知りたい僕は、地面から首を上げ瀬山さんと目を合わす。 そして聞いた。 「”塊”は……消えました。確かに持っていたはずなのに。だけど”鎖”は……まだそこにある(・・・・・)、瀬山さんの足元だ。もしかして、塊は瀬山さんが持ってるんですか? 僕が拘束された時に超早業で奪ったとか。……でもな、いくらなんでもあの一瞬の間でそんな事は不可能だ」 ならどこにある? その辺を探そうにも拘束されて動けない。 頭で考えるしかないのだ。 なにかヒントはないのだろうか……? あ……そういえば言ってたな。 ____本来キミが手を離したら鎖は消えるはずでしょう?  ____だけど私は今、その鎖の上に座ってる、 これがヒントだ。 鎖はいまだそこにある。 鎖を消滅させず維持する為には、”鎖の親玉”に霊力(ちから)を流し続けなければならない。 ”最終的には私の意のままに操れるようにした”、と言っていた瀬山さんなら当然、自分の霊力(ちから)を流す事も出来るはず。
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